BSE 救済求め「会」を結成
埼玉 訪問対話で、共感広がる埼玉農民連は一月二十二日、県内有数の肉牛産地である岡部町で、畜産危機突破緊急集会を開き、「埼玉県BSE被害の救済を求める畜産農民の会」(代表・高田茂岡部町肉牛生産組合長)を結成しました。農民連は、集会に先立って、県北部の約百戸の畜産農家に集会への案内と署名用紙を郵送。同日午前、畜産農家を一軒一軒訪問すると、署名して待っていた農家など、どこでも対話が弾み、共感が寄せられました。
「運動しているのは、おたくらだけ」「BSEの問題で大運動しています」埼玉農民連の仲間が畜産農家を訪ねると、どこも大歓迎。「この問題で運動しているのは、おたくらだけ。他の農業団体は、こういう時にちっとも役立たない。BSEを発生させた農水省の責任を厳しく追及してほしい。全国の畜産農家に迷惑をかけた大臣にはこの際辞めるべきだ」と怒りを口にする榊田時久さん(63=四百頭の肥育牛経営)。一頭三十四万円前後していた肉牛の値段は、十四〜十五万円に下がり、BSE発生以後に出荷した七十頭で、約千五百万円の赤字。農水省が決めた補てん金を加えても、素牛代、エサ代にも足りません。「オイルショック以来の危機だ」という榊田さん。オイルショックによる肉牛価格の暴落で、いったんは廃業をよぎなくされましたが、牛への思いを捨てきれず再建。牛肉の輸入自由化にも、なんとかもちこたえてきました。家の庭には、これまで生活を支えてくれた牛への感謝を込めて「牛《碑」が建っています。 「もうこの歳になって、新たな借金はしたくない。早く消費が回復してほしい」榊田さんの切実な願いです。
署名して待っていた農民も「肉価格暴落による損害を補償せよ」「乳廃牛は政府の責任で全頭買い上げよ」という農民連の要求は、深刻な被害を被っている畜産農家の思いに合致し、急速に共同の輪を広げています。肉牛と採卵鶏と野菜の複合経営を営む小久保富夫さん(48)を訪ねると、署名用紙にはすでに夫婦の名前が書き込まれていました。小久保さんは、肉牛を経営の柱にしようと昨年夏に牛舎を増築した矢先にBSEが発生。出荷した五頭の牛は半値以下になり、「この状態では続けられない」と家族で話し合っていると言います。そして「農水省は現場の深刻さをあまりにも知らない」と、小手先の対策しかやらない政府の姿勢を批判しました。
廃用牛の政府買い上げを強く要望酪農家、肥育農家など約四十人が参加した緊急集会では、「搾乳を終えても出荷できず、タダでエサを食わせている牛が三頭もいて、頭が痛い」という酪農家の悲痛な声とともに、肥育農家からも「感染牛が出れば消費が落ち込む。可能性が高い乳廃牛を全頭買い上げて消費に回さないというのが、発生を許した政府の責任の取り方だ」といった意見が出されました。搾乳や繁殖を終えた高齢の牛の政府による引き取りは、いま開かれている国会でも大きな焦点です。野党四党は、この対策を盛り込んだ「BSE対策緊急措置法案」を提出する予定ですが、政府はこれを頑として拒んでいます。 集会であいさつした阿部幸代・日本共産党埼玉狂牛病対策本部長(前参院議員)は、六〇年代に豚を買い上げた事例を紹介し、「みなさんの要求と運動には道理がある」と激励。住谷輝彦・畜全協会長は、「多くの畜産農民に働きかけてこのたたかいに立ち上がってもらうことが、いま求められている」と呼びかけました。 集会の後に開かれた「BSE被害の救済を求める畜産農民の会」の初会合では、国に対する要請とともに、三月県議会で意見書を採択するよう運動を強めることが確認されました。
(新聞「農民」2002.2.4付)
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[2002年2月]
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