「農民」記事データベース20020128-524-14

さつまいものうた

杉林 和子


河合のじいさんは九十四才だ
自転車を漕いで
坂道を上って
うちの店までやってくる
 
うまいさつまいもをつくったよ
あんたのところで扱っておくれ
 
河合のじいさんは九十四才
血圧は永年不動
上は百三十 下は八十
五十年間医者知らず
昼間はめがね無し
歯も自前だ
河合のじいさんはシベリヤ帰り
戦争で失った青春を
長生きして取り戻すのだと
たどりついた結論は
ガンにならないこと
そのために
さつまいもを食べること
だからじいさんは
毎日さつまいもを食べる
だからじいさんは
毎年さつまいもをつくり続ける
畑にへばりついて
毎年三トンのさつまいもを
掘り上げる
 
河合のじいさんは
地域の小学校の
さつまいもづくりの先生だ
地元紙は
さつまいもの神様と
文字を躍らせるほどだ
 
さつまいもだって
誰にでも
売ればいいってもんじゃない
一生懸命つくったさつまいもだ
わしのさつまいもは
あんたのところで
売ってもらいたいんだよ
 
わかったよ
さつまいもが
こんなにもいいものだっていうこと
おじいちゃんのまっすぐに伸びた背
見事な記憶力
みんなさつまいもの力だね
大地からの贈りものだね
 
わかっているよ
選挙になれば
応援演説するほどの
おじいちゃんの反骨精神
革新の心意気
あの大戦争の犠牲を
とりもどすのは
健康で長生きをすること
だから
さつまいもを
つくり続けることだっていうこと
いのちまるごと
野菜の力で守られているということ
 
河合さん
今年もよろしくね
みんな
おいしいさつまいも
待っているからね

(愛知県豊橋市飯村東村一七―二、自然問屋)

(新聞「農民」2002.1.21・28付)
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2002年1月

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