「農民」記事データベース20020114-523-09

農村の風物詩

佐藤義敏


 山梨県甲府盆地の西側に位置する塩山市。東京・新宿駅から中央高速道で約一時間半、勝沼インターから二十分程度で塩山市に到着する。街の郊外にある松里地区は、干し柿作りが最も盛んな地区である。近くには武田信玄の菩提寺として知られる乾徳山恵林寺(けんとくさんえりんじ)があり、年中観光客が訪れている。松里地区を訪れると、地区全体が甘い柿の匂いがただようような感じがし、あちこちにオレンジ色の干し柿風景と出食わす。

 私は、かつて和歌山県南部町を、特産の梅加工産業の状況を見るため訪れたことがある。駅から降りたらプーンと梅干しの匂いがただよっていた。ちょうどこのときを想いだした。地区全体が晩秋の陽射しを浴びて、日一日と柿の形状が変わっていくのが見えてくる感じがした。

 秋から冬にかけて民家の軒先に吊るされる干し柿の風景は、多くのアマチュアカメラマンにも知られ、カメラに納める姿が見うけられる。私が訪れたのは十一月二十三日。地区の方もカメラマン慣れしてか、あっさり身をかわす方もいれば、歓迎する住民などさまざま。

 軒先に越冬野菜を干す風習は、山里で古くから伝承されている。保存や天日乾燥による甘味を引き出すためのものであると、初めて知った。

 この地方は山並みに囲まれている。日本海側に住んでいる私には何か圧迫感を感じるが、山の美しさや空の透き通った青は、日本海側ではとても見ることはできない。

 正月には自然の甘さを売り物に「お茶の友」として市場に出回ることだろう。

(秋田県写真協会理事)

(新聞「農民」2002.1.14付)
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2002年1月

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