安い農産物の向こう側タイの農村はいま山本 博史
年3回やってくるタイのお正月タイでは、お正月が三回やってきます。第一回目は世界共通の一月一日、太陽暦の正月で、役所などでは大みそかから三日間休みます。第二回目は一月下旬か二月上旬の旧正月。月の動きを基準にした陰暦の新年で、タイの人々は「中国正月」とよび、中国系の人々が経営する会社は休みとなります。中国人は新年の幸運を願って、紙幣を模した新聞紙などを燃やします。第三回目は、四月十三日から一週間近くにわたって祝われる「タイ正月」で、これは星座の動きを基準とした新年です。仕事や勉強で都会に出ている人たちもほとんどが故郷の村に帰って、にぎやかな正月行事に参加します。 「タイ正月」は、「ソンクラーン」とか「水かけ祭」ともよばれ、十一月から続く乾期の終わりにあたり、残り少なくなった庭先の水がめから水を汲んで、愛する人たちにかけあう「水かけ」の伝統行事と重なりあっています。またこの時期は、タイで最も暑い季節で、子どもたちは三月二十日頃から四月いっぱい、学年休み兼夏休みなのです。 四月十三日の前夜までに村の人々は手のひらに一握りずつの砂や土を持ってお寺に集まり、それを境内に積み上げてパゴダを築き、まわりを花で飾ります。 十三日の当日は、早朝、村中の老若男女がお寺に集まりお祈りをしたあと、お坊さんから村の長老たちへと、全員の手のひらに水をかけ、そのあとは村人どうしが勢いよく水をかけあいます。この日からほぼ三日間、青年をリーダーに、村の人々が総出でスポーツ・文化・娯楽の諸活動をくりひろげます。 近年は経済不振の長期化への怒りもあって、水かけの伝統行事も多少ウップンばらしに激しさを増しています。 こうしてタイでは、十二月五日の国王誕生日の祝賀イルミネーションからクリスマスを経て、四月半ばの「タイ正月」までおよそ半年近く、国をあげてのお祝いムードが続きます。 東京でも十数年前から、毎年四月には、タイ人留学生を中心とした実行委員会主催による「ソンクラーン祭」が開催され、およそ三千人のタイ人やタイ好きの日本人が集まっています。
(新聞「農民」2002.1.14付)
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[2002年1月]
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