うちの野菜を食べ続けたいから私農業を始めました茨城県下館市 谷中希久子さん(24)「家で作ったおいしい野菜を食べ続けたい」と、昨年四月から、茨城県下館市で本格的に農業を始めた農業後継者がいます。作った野菜を朝市で販売し「将来は野菜を加工して販売したい」と夢を語る谷中希久子さん(24)。青年部員でもある谷中さんのお宅に茨城県西農民センター青年部事務局長の前田修一さんと訪ねました。(森吉秀樹)
「谷中さん、ネギちょうだい!」下館市役所前の朝市に集まったお客さんの声が響きます。県西農民センターの朝市が始まったのは十三年前。小学生の頃から両親に付いて朝市を手伝っていたという希久子さんは「この小松菜は誰のもの、このゴボウは誰ものと言えるほど買う人が決まっているんですよ」とお客さんの顔が見える朝市の魅力を語ります。この日も、谷中さんのネギじゃなきゃダメというお客さんが野菜を買って行きました。 お客さんが少なくなると、こんどは生産者同士で農産物が行き交います。帰る頃にはブロッコリーやハクサイなど、様々なこだわりの野菜が集まり、食卓を飾ります。「これがいいのよー」と母親の光子さん。これもまた朝市の魅力だといいます。
生でも食べられるおいしさ谷中さんの家では、有機質肥料を使って土作りにこだわり、ほとんど農薬を使わずにネギや小松菜などの野菜を栽培しています。訪れた時、筑波山が見える谷中さんの畑では、ちょうどカブ収穫の真最中。真白できめの細かいカブを割って食べてみると、柿を食べているようなほのかな甘さがあり、生のまま食べられます。「ほんと言うと、うちの野菜食べてると他の野菜は食べれない」と言う希久子さんの話に思わず納得してしまいます。
地元の野菜を加工したいと中学生の頃、県西農民センター主催の横浜港見学に参加した時、ショックでしばらく市販の食べ物を食べられなかったという希久子さん。農作業や朝市を手伝うなかで、安全でおいしい、家の野菜や地元の野菜を使った加工の仕事をしたいと考えるようになりました。高校卒業後は、土浦市にある短期大学に進学し、栄養士の資格を取得。お弁当の会社で働いていた時には、一部で地場野菜の利用を実現しましたが、輸入農産物や、安い加工品を使う実態を変えることはできませんでした。会社は、長時間働き詰めで体調を崩したこともあり退職。しばらく農作業を手伝いながら就職活動をしていましたが、昨年四月、農業に専念することにしました。
何か面白い取り組みしたい畑や作業場では、元気な希久子さんが作業をリードして活気があります。一人娘の希久子さんの就農について、父親の清一さんは、「うれしい反面、苦労させたくない、他の仕事をさせたほうがいいのではないかとも思う」と複雑な心境を語ってくれました。特に、昨年は野菜の値段が安くて大変でした。一方、希久子さんは「農業が大変なことはわかるけど、悩まないで、安全なものを求めている消費者と何か面白い取り組みをやっていきたい」と希望を語ります。「わかっているつもりだったけど、やってみると大違い。毎日が研究です」と就農一年目の感想を話してくれた希久子さん。昨年の八月には調理師の免許を取得し、こんどは農産物の加工施設を造って、加工の夢にチャレンジしようと張り切っています。
(新聞「農民」2002.1.14付)
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[2002年1月]
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