〔声明〕三品目のセーフガード発動中止に抗議する二〇〇一年十二月二十六日 農民運動全国連合会
一 政府は十二月二十一日、長ネギ、シイタケ、畳表の三品目のセーフガードの本発動の中止を決めた。これは、輸入農産物によって重大な被害を受けている日本農業の現実を無視し、国際的に認められた正当な権利すら放棄する重大な裏切り行為であり、断じて認められない。 私たちは、万感の怒りを込めて政府に抗議するとともに、「合意」を撤回し、ただちに三品目のセーフガードの発動と、輸入によって被害を受けているあらゆる産品にセーフガードを発動することを強く要求する。 一 暫定セーフガードの発動は、あくまで、本発動を前提にした緊急措置であり、農水省など関係三省の事務当局も、暫定発動の期限切れ後に本発動へ移行する準備を整えていた。 これを妨害したのは、靖国神社参拝を強行して亀裂が生まれた中国との関係を修復するために十月に訪中した際、「日中協議による解決」を約束した小泉純一郎首相自身であったことはまぎれもない事実である。ここには「改革」を叫んで国民に犠牲を押しつける小泉政治の本質が如実にあらわれている。 一 日中両国の「合意」は、日本が三品目のセーフガード発動を中止することと引き換えに、中国が日本からの自動車や電気製品などに高関税を課している“報復”を中止するというものである。 「セーフガード協定」は発動に対する報復を厳しく禁止しており、WTOの加盟国となった中国が、報復措置をとることは絶対に許されるものではない。これに屈することは、国益の放棄であり、著しい屈辱外交といわなければならない。さらに、今回の政府の態度は、単に対中国だけにとどまらず、世界に向かってセーフガード発動の権利放棄を宣言したに等しいものである。その最大の背景は、政府が日本の輸出関連大企業の利益を最優先したことである。 一 「合意」による新たな枠組みのポイントは、日中双方が生産者や流通関係団体など民間レベルで「協議会」を設置して「秩序ある貿易を促進する」というものである。 もともと、輸出「自主規制」が何ら輸入の歯止めにならないことは、一九九七年に中国がニンニク、ショウガの輸出を自主規制することと引き換えに日本がセーフガードを回避したものの、その後、輸入が激増したことからも明らかである。 しかし今回の「合意」は「具体的数量は決めていない」(武部農相)、「協議会は数値目標などを決める場ではない」(広瀬経済産業事務次官)という言明から明らかなように、中国側が「日本にセーフガード発動を断念させた一方、三品目の輸出を安定化(規制)する具体策には一切踏み込ませなかった」(日本農業新聞十二月二十六日)という無様な結果に終わった。 一 輸入の激増に苦しむ農民や農協、自治体関係者、安全で安定した国内産の農産物を願っている消費者の願いはセーフガードによる輸入制限である。また、輸入によって産地が崩壊の危機にある農産物以外の地場産業関係者の願いも同様である。それは、千八百を超える地方議会がセーフガードの発動を求める意見書を採択していることにも明確に示されている。 こうした多数の声を無視した小泉内閣の態度は、まさに暴挙であり、必ずや農民や国民の厳しい批判の前に破綻せざるをえない。 私たちは、中国のWTO加盟にともなって新たにもうけられ、発動が容易になった「対中特別セーフガード」の活用を含め、セーフガード発動を求めるたたかいに全力をあげるものである。
(新聞「農民」2002.1.14付)
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[2002年1月]
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