山間地農業の発展に力を発揮野菜作りは高齢者の生きがい岡山農民連 加茂川町産直野生生産者組合過疎化・高齢化が進み、さらに小泉内閣の農業「改革」で切り捨てられようとしている中山間地。ところが、おっとどっこい。この二年間で仲間を二倍に増やし、高齢者が中心になって野菜作りと地域農業の発展に力を発揮して、町からも注目されている岡山県の加茂川町産直野菜生産者組合(日名幹雄組合長)。農民連に団体加盟し、元気で野菜作りに励む同組合を訪ねました。(西村正昭)
二年間で仲間が二倍に増えた手もかじかむような朝六時。「おはよう」「おはよう」と真っ白に吐く息が朝の寒さを吹き飛ばし、日名義人さんの家の作業所に野菜や漬物、こんにゃく、梅干しなどの加工品が届けられます。出荷する量は、二〜三種類の人もいれば、十種類以上も出す人も。伝票には手際よく出荷者別の品名と値段、数量が記入されます。集まったものは、日名組合長らが毎朝六時半に出発し町役場に持って行きます。全町から持ち込まれた野菜などは、車で約一時間かかる岡山駅西口の奉還町商店街のアンテナショップ「ふるさと交流プラザ」に運ばれ、日曜日を除く、週六日間、販売されます。二十九団体(集落)が出荷していますが、欠かさず出しているのは産直野菜組合だけ。 アンテナショップは地元の農産物を少しの量でも販売し、農家のお年寄りに元気になってもらおうと町が二〇〇〇年三月にオープン。このオープンの同年二月末に約二十人で産直野菜生産者組合が結成され、現在は二倍の四十人の組合員となっています。六十〜七十歳代が組合の中心です。
野菜作りに顔ほころばせて加茂川町は岡山県の中心に位置し、標高二百〜四百メートル、起伏の激しい狭い谷間と高原に集落が点在する人口約六千五百人の農山村。農家一戸当たりの作付面積は平均六十アールです。産直野菜組合員が多い美原地区は、山あいの急傾斜地にへばりつくように畑があります。一人暮らしで、杖をつきながら白菜やダイコンなどを作っている日名夏子さん。「作るのが楽しい」と顔をほころばせます。店を開きながら野菜も作っている岡本松恵さんも「みんと一緒にやっていると楽しいし、張り合いもある」と語ります。 八十歳の岩木真佐子さんは自宅近くの畑にニンジン、白菜、ネギのほか菊の花も栽培。「春には何を出そうかと、いまから準備している」と、もの作りに意欲をみせる岩木さん。どの組合員に聞いても、作るのが楽しく、生きがいになっていることがうかがえます。 「楽しい農業をやれば、医療費もいらない」と語る加茂川町産業振興課の小出信義課長。話を聞いていると“野菜作りが病気を治してしまった”と思ってしまうほど張りきる組合員。 年間を通すと一人が何十種類もの野菜を少量多品目で作り、これが年間を通じほぼ毎日アンテナショップに出荷できる秘訣になっています。こうした取り組みの背景には「先祖からの田畑を荒らしたくない」との思いが共通してあります。
組合員の意欲が町おこしに一役アンテナショップへの出荷とともに、毎週木曜日には市場の仲卸を通して岡山市と倉敷市のスーパーの一角で直売を行っています。直売には「餅つき」や「こんにゃく作り」を実演して野菜とともに売ります。そのために「餅つきグループ」「こんにゃく作りグループ」を組織し、五〜七人が一組になって行きます。最初はお客さんに売るのが苦手な人も、自分で作ったものが喜ばれるのを肌で知り、「こんどはいつ行けるの」と積極的になっています。今では直売を希望する人が増え、順番を待つほどです。 ものを作り、売ることを通して組合員は、ますます意欲を燃やし、工夫も努力もしています。日名組合長は「秋にはススキ、フジバカマ、オミナエシなども販売した。七夕のときには笹を出したら、結婚式にもほしいといわれ、笹を持って行った。野のものはすべて金になる」と、知恵を働かせ地元の自然の価値を大いに売り込んでいます。「会社を定年退職した後、産直組合をやったが、会社仕事より野菜作りの方が楽しい」と語る組合長は新たな生きがいをみつけたようです。 不況の影響で仕事を失う中で、組合に参加するようになった楢崎郷治さん(37歳)。若さを買われ、直売の「餅つきグループ」の要員として貴重な存在です。「造園業の会社に勤めていたが、公共事業も減り、仕事もなくなってきた。給料も下がり始めたので辞めた。直売に参加し、お客さんにたくさん買ってもらうとおもしろい」と手応えを感じています。 野菜産直組合は、産直運動を積極的に行いながら、安定した供給地・生産地をめざして規模の大きな専業農家も視野に入れて呼びかけていこうと意欲的。組合長を先頭に、今年はさらに町起こしに大きな役割を果たし、飛躍しようと張りきっています。
(新聞「農民」2002.1.14付)
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[2002年1月]
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