「農民」記事データベース20020107-522-07

三が日は地粉の手打ちうどん

――埼玉・妻沼の正月料理――


 ♪もぅ〜いーくつ寝るとお正月 お正月には餅食べて〜♪ お正月といえば楽しみなのがご馳走。おせち、お雑煮、お餅……。その土地ならではのお正月を求めて、埼玉県妻沼(めぬま)町の畑作農家、森千恵子さんを訪ねました。

 妻沼は、長ねぎや小麦、大和芋、ごぼうなどの生産がさかんな畑作地帯です。千恵子さんは「特別なものは何も作らないのヨ〜」と言いながら、年の暮れには煮〆や煮豆、きんとんなど、地元の材料を使ったおせちをおばあちゃんと一緒に作るのだそうです。

 森家の大晦日は、年越し蕎麦ではなく、けんちん汁と魚にご飯です。けんちん汁の具は家でとれる大根、人参、里芋、ごぼう、豆腐などなど。これを油で炒めたのち、味噌仕立てのあったか汁にしていただきます。

 年明けた元旦の朝は、おせちと手打ちうどん。「うちで小麦を作ってるんだもの。小麦産地のこの辺りでは、お正月にはうどんを食べるのよ。お正月の朝はうどんを打ったりたいへん」と千恵子さん。同じ妻沼のなかでも、荒川に近い北部は砂目の土壌で、南下するほど粘土質になるため、農家によってうどんの味が違うのだそうです。冷たくしめたうどんを温かいツユにつけて食べるのが妻沼風です。お昼はお餅を雑煮にして食べます。

 夜は、トロロ芋ご飯。妻沼はトロロにすると粘りの強い大和芋の産地です。よく知られたイチョウ型の大和芋は妻沼の西部で、森さんが住む東部は棒型の大和芋を栽培しています。ダシ汁と卵黄、醤油で伸ばしたトロロを白いご飯にかけて食べるのですが、「朝、うどんツユを作るとき多めに出し汁をとっておくんだよ」というのがおばあちゃんから教えてもらった主婦の知恵。トロロは消化酵素のジアスターゼ、アミラーゼが豊富で、消化のよい滋養食。先人の知恵には驚かされます。ついつい食べ過ぎてしまうお正月にはぴったりの食材です。

 三が日はこの三食のサイクルが続きます。「子どもは飽きてしまって、カレーが食べたいと言う」そうですが…。千恵子さん曰く「特別なものは何もない」というお正月料理こそ、子供たちをはぐくむ「故郷の味」ではないでしょうか。


ゴボウの甘酢煮

 森家のおせち料理から、地元のゴボウを使った一品を紹介します。おいしく作るポイントは何といっても、おいしいゴボウを使うこと。酢の働きでホックリと柔らかくなり、ゴボウと思えない白さがお正月向き。ゴボウの香りがたまらないさっぱりした逸品です。

材料 ゴボウ、酢、砂糖

作り方

(1)ゴボウを洗って、斜め切りにする。

(2)下ゆでする。ときどきかじって固さを確かめ、柔らかく、しかも歯ごたえが残っている程度にゆでて、ゆで汁は捨てる。

(3)ゴボウを鍋に戻して、ひたひたより少ないくらいの酢と砂糖を加えて煮る。酢と砂糖の量は味見して好みで調節する。十分くらい煮てから、火を止めて冷まし、味をしみ込ませる。

(新聞「農民」2002.1.7付)
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2002年1月

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