私たち“野菜作り大好き”群馬県安中市 女性3人組群馬県安中市、ここに野菜作り大好き、いつも一緒の元気いっぱい三人娘(?)がいます。ご覧下さい、あふれんばかりのこの笑顔――その様子はまさに「安中キャンディーズ」。群馬農民連会長の長沢尚さんと訪ねました。(産直協 笠原尚)
桑畑切り開き転身「共同畑」が“とも育ち”の場植えつけから収穫・出荷まで安中市は群馬県の南西部に位置し、周囲を群馬の名山、榛名と妙義に囲まれる美しい街です。昭和の初期から中期にかけては、東邦亜鉛工場による農地の重金属汚染に対して農民たちが公害反対の運動を繰り広げました。十五年の裁判闘争の末、損害を認めさせ、公害防止協定まで結んだ、誇り高い歴史を持つ街です。「安中キャンディーズ」の三人は、有坂充子さん、中島ヒサ子さん、有坂厚子さん。三人は充子さんの畑で野菜の共同作業をしています。 共同作業の朝は、午前七時に集合。資材の購入から植え付け、収穫出荷まで完全に共同作業。利益もきっちり三等分です。それも今年で三年目。初めの年はオクラ、ジャガイモの二品を作り、二年目からはブロッコリー、カボチャ、サツマイモ、ジャンボインゲンなど様々なものを植えてみました。穫れたものは、群馬農民連を通して生協に出荷。また市場出荷や無人の直売所も作って販売しています。
最盛期には夜明け前から!「この辺りは昔から桑畑ばっかりでね、他の野菜のことは分からないのよ」と充子さん。三人とも近所で、ずいぶん長いこと養蚕を営んできました。しかし輸入の急増にともなって繭の価格が急落し、出荷先の製糸工場が地域から次々と姿を消しました。そんな折り、「一緒に野菜を作って出荷しないか」と長沢さんに声をかけられたそうです。三人はそろって農民連に入りました。一面の桑畑を切り開き、本格的に野菜を植えたのはほんの数年前。同じ農業でも、野菜作りは彼女たちにとって未知の世界。「だから三人で教え合って、勉強してるんさ」――三人一緒なら、不慣れな野菜作りもなんとかなると始めました。同じ安中市に住む長沢さんから肥料のやり方、育て方などを教わります。また近所の話や、農協、自分の畑で見聞きしたことなどを共同畑に戻ってはお互いに情報交換。三人の畑はいわば“とも育ち”の場です。 昨年は長沢さんから声をかけられ「ジャンボインゲン」を作りました。このインゲンは幅二センチ、長さは二十センチのビックリサイズ。サヤは甘く柔らかく、味も良い。ただ虫が付きやすく、昨夏は高温障害の被害もかなり出ましたが、なんとか乗り越え、結果的には「上々の出来」。全国的に珍しいこともあり、市場の評価は「良かったんよ」と顔をほころばせます。 共同作業ならではの苦労もあります。自分の畑や家事もしながら、三人の予定を合わせるのはやはりたいへん。毎日の連携プレーをするためにケータイ電話も使って常にお互い連絡を取り合います。 また初めての試みでは、失敗もしばしば。オクラを初めて作ったときは、作付の目安がよく分からずに、作り過ぎてしまいました。オクラは特に最盛期には休む暇がまったくない作物。おかげでその年の七月から九月の収穫期は、夜明け前から日没後まで、ご飯の時間も惜しんでオクラの収穫。八月は「夕立の中でも、畑に飛び込んで収穫しないと間に合わなかったんよ」とたいへんな思いをしました。
干しイモ作りに初挑戦して一昨年は秋にニンジンの値が大暴落。生協も引き取ってくれず、困り果てたあげく、泣く泣く市場に捨て値で出荷しました。しかしそんなときも畑に戻って顔を合わせれば、苦労も三分の一です。昨年三月、セーフガード発動に重い腰の政府に対し「一緒に東京まで出向いて、産地の現状をぶつけよう」と群馬県連から三人に声がかかりました。しかし、なにしろ猫の手も借りたい時期。畑を放ってはおけない。迷いましたが「充子さんだけでも行くといいねぇ」と、三人の奮闘が始まりました。充子さんの家のハウス管理をヒサ子さんが前日に引き継ぎ、同じ日に開かれた農協の作付講習会には、厚子さんが代わりに参加。畑を二人にまかせて三月二十二日、農水省の前には充子さんがみんなの代表として駆けつけて、農家の思いを政府に届けました。 「いま思うと大変だったけど、忙しいときは毎日が夢中で、家のこともほったらかしになっちゃうんね」と顔を見合わせます。「だんだん実がなってくるんが楽しくて、ついたくさん作っちゃう。だから、収穫がたいへんよ」という三人の笑顔につい、こちらも引き込まれます。作った野菜が近所で喜ばれていることも、励みになっているようです。 加工もイモガラ、味噌など次から次にチャレンジしています。干しイモ作りに初めて挑戦しました。取材に訪れた日は乾かして七日目。一口味を見て「まだ早いかな」「お手本の干しイモは、もっと甘かったんだけどねぇ」――三人の挑戦はまだまだ続きそうです。
(新聞「農民」2002.1.7付)
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[2002年1月]
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