「農民」記事データベース20020107-522-02

牛海綿状脳症

悩み・要求の窓口「BSE110番」開設

農民連「対策本部」も設置

関連/千葉県白井市の酪農家を激励


 農民連は、十二月六日、BSE(狂牛病)対策本部を設置し、十日から「BSE一一〇番」を開設(TEL〇三-三五九〇-六七五九)。農民連本部の電話には連日、農家などからの悲痛な訴えが寄せられています。

 肉牛だけでなく、乳牛の子牛も暴落し、「このままでは秋田県には一頭も牛がいなくなってしまう」と、農家の苦境の深刻さを訴える秋田県中央酪農共済組合の組合長。老廃牛出荷を市場が拒否している問題では、熊本県の肥育農家から、「和牛の繁殖メス牛も同じ。このままでは首をつるしかない」と悲痛の叫びも。

 家畜保険所の職員は、「毎日会う農家が気の毒でしょうがない。BSEを発生させた責任は、薬害エイズよりも大きい」と、本腰を入れて農家救済に乗り出さない政府を批判。福島の肥育農家は「現場は、せっぱつまっている。過去三年間の平均価格を基準に価格補償すべき」と訴えました。

 対策本部では、「一一〇番」に寄せられた悩みや要求を、その都度、農水省など関係機関に持ち込み、具体的な対応を迫ることにしています。狂牛病対策本部の構成は次のとおりです。▽本部長=佐々木健三・農民連会長 ▽副本部長=住谷輝彦・畜全協会長 ▽事務局長=石黒昌孝・農民連事務局次長

 「BSE(狂牛病)一一〇番」に寄せられた声の一部

●熊本県の和牛農家

 老廃牛が出荷できないのは、酪農家だけの悩みではない。和牛の繁殖農家も困っている。国が早急に対策をとらなければ、首をつるしかない。三十カ月齢以上の牛を、BSE発生以前の評価額で国が買い取るべき。

●ある県の家畜保険所の職員

 消費の回復も大事だが、国はそれを自らの責任を覆い隠す隠れ蓑にしようとしている。BSEを発生させた責任は、薬害エイズよりも大きい。毎日会う農家が気の毒でしょうがない。農家の救済にあらゆる手段を講じるべき。

●愛知県知多半島の乳肉複合経営

 感染牛を出したくないからと、と場も農協も老廃牛の出荷を受け付けない。農家も、もし自分の牛から見つかれば他の牛も処分しなければならないから出荷したくない。廃用牛は、政府が買い上げるべき。「加工原料乳の補給金単価に反映されるからできない」という農水省の言い訳は通用しない。集会などをやるなら私たちも参加したい。

●秋田県中央酪農共済組合長

 廃用牛が出荷できないから、岩手や山形に持っていって処理してもらっている。牛は家族も同然で、とても自分のところでは処分できない。このままでは秋田から牛が一頭もいなくなってしまう。

●福島県の肥育農家

 九月から出荷を続けているが、最近になって一段と相場が下がっている。A2等級は一キロ三百円で、豚の上物より安い。これではとてもやっていけない。国は認識が足りない。現場は、せっぱつまっている。このままでは畜産農家が相当つぶれる。消費回復のための施策とともに農家に十分な補償をすべき。過去三年間の価格を基準に差額を補てんすべきだ。

●茨城県の肥育農家

 五十万円で売れていた牛が七〜八万円に。あと三カ月もたない。政治家は輸入すればいい、日本の畜産がつぶれてもいいと思っている。誰かが声をかけて各県の畜産団体をまとめることをすべきだ。声を聞くだけでなくて、要求をまとめてほしい。


農民連 佐々木会長

千葉県白井市の酪農家を激励

 農民連の佐々木健三会長は、十二月十二日、BSE(狂牛病)に感染した牛が見つかった千葉県白井市の酪農家を訪ねて、「BSEは、農家にまったく責任がない。苦境を乗り切った努力は、全国の農家を励まします」と激励しました。

 「まわりの人に支援してもらい、復活することができて感謝しています」という夫妻の顔は、やっと戻ってきた充実感があふれています。そして夫妻には、もう一つ、うれしいことがありました。息子さんが十二月初めに結婚して、一緒に暮らすことになったのです。「お嫁入りの道具は、なんとタンスと牛一頭だったんですよ」と、奥さんの顔がほころびます。

 農場内に、「これまで生活を支えてくれた牛、営農の再開を支えてくれた仲間への感謝の気持ち」を込めて、碑を建てた夫妻。そのことをマスコミの報道で知った島根の酪農家から届いた手紙には、「私は、どうしても牛を経済動物と思えずに、廃用牛を出すときにいつも涙が出ます。どんなにつらく苦しい思いだったでしょうか。同じ乳牛を飼っている者として、涙が止まりませんでした」と書かれていました。

 二頭目、三頭目のBSEが見つかった北海道・猿払村、群馬・宮城村の酪農家について、ご主人は、「絶対に廃業してほしくない。国は、立ち直れるだけの補償をちゃんとやるべきだ」と強く言います。

 佐々木会長は、「今、苦しめられている日本中の農家が支えあい、そして立ち上がって要求していくことが大事。万全の対策を国にとらせるために、農民連も全力でたたかっていく」と述べました。

(新聞「農民」2002.1.7付)
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2002年1月

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