「農民」記事データベース20011224-521-08

安い農産物の向こう側

タイの農村はいま

山本 博史


政府が米870万トン買上げ

 十一月十五日、タイ政府は今シーズンの米市場介入計画をスタートさせました。農民からの強い米価要求もあって、モミ一トンあたり市場価格より千五百バーツ(四千二百円)高い価格で、二カ月間に限定して、総量八百七十万トン買い上げるという計画です。

 タイ米の輸出量は、これまでの最高時でも六百八十万トン。これをさらに上回る数量の政府による直接買い上げは、国内市場も対象とし、これまで自由市場を基本としてきたタイの米政策に歴史的転換をもたらすもので、政府による米管理制度が始まりつつあるといえます。

 市場価格の千五百バーツ高という価格支持は、稲作農民への政府助成とみることもでき、ケアンズ・グループの一員で、「農業を工業なみに扱え」と主張してきたタイ政府は、貿易政策と国内政策に大きな矛盾を抱えることにもなります。

 米輸出業者からは「農民を甘やかしすぎている」「市場に混乱をもたらす」など、激しい不満が表明されています。しかし政府は、「いまの市場価格は下落しすぎ。農民の救済が必要」との姿勢を貫いています。日本政府にも学んでほしい姿勢です。

 ところで、この高値による買い上げは、ほんとうに農民を甘やかしすぎているのでしょうか。いま市場価格はモミ一トン換算で四年前の六千九百バーツから半値以下の三千バーツ近くに下落しており、たとえ千五百バーツ上乗せしても、政府発表による全国平均生産費をようやくカバーできる金額です。とりわけ水田面積の五五%を占める東北タイでは、単位面積あたりの生産費は低いものの、収量が極端に少ないために、一トンあたり生産費は五千バーツとなっており、この政府助成でもまかなえないのが実情です。

(新聞「農民」2001.12.24付)
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2001年12月

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