「農民」記事データベース20011217-520-01

西東京 お米屋さんの収穫祭

“農村の味に歓声”

――手ごたえ感じた――

 「生産者とお米屋さん、消費者との共同をさらに広げよう!」――三年目を迎えた農民連ほくほくネットと西東京米研の収穫祭が十一月二十五日、盛大に行われました。農民連からは東北・北海道と関東、北陸ブロックに所属する各県の農家が、自慢の農産物と加工品を持ち込み、芋煮や手打ちソバ、餅つきのほか、お米の講習会も行いました。


人気の野菜や加工品

東京・東大和山崎商店

 この日は天候にも恵まれ、お昼には抽選券と芋煮などの引き換え券を持った大勢のお客さんが訪れ、どこのお店でも大盛況。収穫祭の雰囲気に誘われたのか、久しぶりのお客さんもやってきてお米を買っていきます。「本当にお客さんが来るのかどうか半信半疑だった」という初挑戦の三店でも予想以上の反応に手ごたえを感じていました。

 一カ月前からチラシを配布し準備してきたという山崎商店では、二店で収穫祭を開催。桜ヶ丘店では、若い子ども連れのお母さんが次々に訪れ、子どもたちが芋煮や餅を「おいしー」と頬ばっていました。

 芝中店では、お米を使った「ポンせんべい」の実演が子どもたちに大人気。お米がお菓子になる姿を見た子どもたちは、生米もつまんでいました。

 地粉を使った茨城・県西産直センターの生産者の手打ちソバには、多くの消費者が並び、おいしくてもう一度買いに来た人や、田舎が茨城だというお客さんとの会話が弾みます。お米の講習会では、集まった消費者に「私たちの作った安心、安全なお米をぜひ、お米屋さんから買って下さい」とよびかける生産者。

 収穫祭は今年で三回目、お客さんが毎年楽しみにしているという山崎商店。山崎正人代表理事(36)は「昨年食べた野菜やミカン、味噌、あんこがほしいとお客さんからせかされました。農民連の野菜や加工品には人気がある」と話します。

 昨年の収穫祭で好評だった農産物を扱いたいと思い、今年はお店で納豆、味噌、漬物、きな粉を販売してきたという山崎さん。こうした「小さな物産展」を来年はさらに広げていきたいと話してくれました。


消費者は味と安全性を求めている

東京・立川 マルコー米店

 「子どもに昔ながらの餅つきを見せたくて…」――小春日和に誘われて、東京・立川市にあるマルコー米店の収穫祭は、親子連れなど、たくさんの人出でにぎわいました。

 千葉県農民連のつきたて餅には長蛇の列。「ヨイショ」「ヨイショ」と、お客さんからも声がかかり、パック詰めやアンコをからめるのを手伝う若い女性のお客さんも。福島・会津農民連の飯塚達雄さんが打つ手打ちソバも大好評。

 倉庫で開かれたお米の講習会では、除草車を持参した辺見哲哉さん(福島・塩川町=44)が、おいしくて安全なお米を作る努力や苦労を説明。「食べていただくみなさんの笑顔を見るのが何よりの喜び」と訴えます。会場からは、「消費者が求めているのは、味プラス安全。すばらしい米作りをがんばって続けてください」といった励ましの声があがりました。

 マルコー米店の店主、小林雅美さん(59)も「農家の方が日本の稲作の話をしてくれる。それをお客さんが真剣に聞いて質問もする。大歓迎のことですよ」と喜びます。

 同店の町内には古い団地がありますが、住民の高齢化やスーパーの進出、立川駅前の再開発などで、かつて七店あった米屋は、今は三店に。団地の前の商店街も火が消えたような状況だといいます。そうした中でマルコー米店は、昔ながらのお得意さんを大切にし、この日も、近くに住む車椅子のご婦人の、おいしそうに芋の子汁を食べる姿も。

 「これからは、若いお客さんにも魅力がある、『ここに来れば楽しい』という店作りをしていきたい」と、小林さんは抱負を語っていました。


農家の人が来るのを楽しみに

東京・稲城 加藤精米店

 「さぁ、誰か餅つきしてみるかな?」「ヨイショー!ヨイショー!」――加藤精米店で催された「北北(ほくほく)ふれあい祭り」は、地元のお客さんや家族連れで大盛況。お天気にも恵まれて、おいしい湯気と笑顔がいっぱいのお祭りイベントになりました。

 この日は、朝早くから新鮮な農産物とともに千葉、福島、青森から総勢十六人の生産者がかけつけ、手打ちソバ、もちつき、芋煮づくりに腕まくり。ところがまだできあがらないうちからお客さんが長蛇の列をつくって、「まだ?」「もういい?」とせきたてます。アツアツの芋煮をほおばりながら、「うーん、おいしいわぁ〜。このお芋どこ産? 肉はどこの牛肉?」としきりに質問が寄せられ、消費者の生産者への高い関心をじかに感じさせます。

 「俺たち、この米屋さんで売っているお米の生産者なんですよ」と話すと、「へぇー、お米も作ってるの?」という人や、「チラシで農家の人が来るっていうから楽しみにしてたのよ」と励ましてくれるお客さんも。餅はつくそばから売れてしまい、会津産一〇〇%の名人がうつソバ、芋煮は持ち帰りたいという希望が続々と寄せられ、野菜や果物も完売しました。

 社長の加藤さんは「お米屋さんは台所と直結できる商売だと思われていますが、家族構成や食生活が変わった今は、それだけでは商売できません。大切なのはお客さんに情報を提供すること。米を売るだけじゃなくて、インターネットのホームページなどの新しい手段も活用して、生産者の顔や様子も伝えていきたい。生産者と消費者を結ぶ大きなネットワークの中継点になるような、そんな米屋が求められていると思う」と話してくれました。


お客さんに必要な

情報提供したい

東京・八王子 関山米穀店

 「これだけのお客さんが来てくれたので成功ですね」と話してくれたのは、関山米穀店の店主、関山博さん。店頭と駐車場、倉庫前で、農民連が一日だけの“市”を立てました。

 野菜、果物、漬け物を広げる新潟県農民連。安全な牛肉入りの芋の子汁を食べさせる岩手県農民連。手打ちソバの実演をしながら販売し、ストーブで自慢の白毛もちを焼いて宣伝する長野県農民連。お客さんはいつもと違ったようすに足を止めます。

 関山米穀店は、車の往来が激しい甲州街道から少し入った静かな住宅地にあります。以前は、関山米穀店の並びには、魚屋、肉屋、八百屋などの店もあったそうですが、今は他にクリーニング店が見えるだけ。

 関山さんは「今まではお客さんの台所は米屋にまかせておけ、米屋が台所を預かっているという考えだった」と率直に語ります。

 「これからは、安価、安全なものを求めるお客さんに情報を渡して、お互いが勉強して行くことが大切。消費者と農家の架け橋をと考えてきたけれど、その距離を狭めなければ米屋は生き残れない」ときっぱりと言います。

 駐車場で開いた米の講習会では、新潟県農民連の帆刈善一郎さんが米糠や魚カスなどを使った安全な米作りを説明。お客さんから「農薬を使わなければダメなんでしょ」と質問が出ると、「高齢なので、除草剤を一回だけ使っています」と答えたところ「それじゃ、米を見て買っていこうかな」と店頭に向かいました。

 「芋の子汁、五人前ください」と鍋を持って来る人、「生ソバを二個持ち帰りたい」「梨を来年もほしい」など、消費者とのうれしい交流もありました。

(新聞「農民」2001.12.10・17付)
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2001年12月

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