子供歌舞伎 初演目登場いょッ、日本一!
日本最古の回り舞台「さてその次ぎは江ノ島の……ふだん着慣れし振袖から髷も島田に由比ヶ浜……八幡様の氏子にて鎌倉無宿と肩書きも島に育ってその名せえ、弁天小僧菊之助ェー」と大見得を切る。「いよう、日本一!」と掛け声がかかった瞬間、「いてっ!」と、思わずでた悲鳴に、会場は大爆笑。ますます盛り上がりました。かわいい「白浪五人男」におひねりが雨霰と投げられ、その一つが日本駄右衛門こと横山春樹くん(小学二年)の額に当たってしまったのです。「歌舞伎とお囃子と民話」が上演され、初演目の子ども歌舞伎「白浪五人男・稲瀬川勢揃いの場」での出来事でした。 塩田小学校でも少子化が進み、五人のうち男子は春樹くんだけ。翔子ちゃん、菜由ちゃん、旬子ちゃん、敦美ちゃんたちの女子(各小学二年)の参加で勢揃いすることができました。
昔は稲刈りの後の畑で茨城県那珂郡大宮町西塩子(にししおご)の塩田公民館グランドで「西塩子の回り舞台」の第一回定期公演が十月二十七日に行われました。久しぶりの太陽が丸いドームのような舞台の屋根にまぶしく降り注いでいます。竹で組んだ屋根と回り舞台がついた組立式の歌舞伎舞台は九九年十一月、茨城県指定有形民俗文化財に指定されました。今回は指定後初の、しかも半世紀ぶりに復活して三度目の公演です。 組立式の舞台は、背景となる襖や各種の幕と芝居の大・小道具が主。柱や屋根に使用する百五十本余りの材木や三百本ほどの真竹は、しなりを利用するために組立のたびに山から伐り出しました。 「西塩子の回り舞台保存会」事務局長の永井照胤さん(県北農民センター)は「都市部の劇場に対して地方の舞台は『農村歌舞伎舞台』と呼ばれ、大部分は常設の舞台でしたが、ここでは『西塩子のマワシブデェ』と親しまれ、組立式だから近隣の村へも組立人ごと貸し出したんだよ。昔は稲刈りの後、小麦を播く前の畑を借りて組み上げたんだ。だから組むのは一カ月ほどもかかったが、一晩か二晩の芝居が終わると、すぐに畑に戻したんだ」と話しています。 伝統の大幕には「文政三辰菊月」(一八二〇年九月)と染められており、「現存する日本最古の回り舞台」といわれています。娯楽の少なかった当時、村の芝居は一大イベント。夕方から深夜まで、いつも静かな村里は千人を超す見物人で賑わったそうです。 「きょうは四千人は来てくれたかな」と永井さんは、嬉しそうに目を細めました。 (県北農民センター 大野憲治)
(新聞「農民」2001.11.26付)
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[2001年11月]
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