「農民」記事データベース20011126-518-04

狂牛病問題

“実態踏まえた対策を”

農民連と畜全協が農水省に要請


 農民連と畜全協は十一月十三日、狂牛病問題で八回目となる農水省交渉を行いました。千葉、茨城、群馬、福島、神奈川、宮城から畜産農民らが参加し、現場の実態を伝え、対策の充実を求めました。

 四十五万円していた肉牛が二十万円になるなど、狂牛病発生による価格の暴落は、畜産経営に深刻な影響を与えています。交渉では「枝肉、子牛、ヌレ子とも過去三年間の平均価格を補償しろ」と要請しました。

 これに対して、十月二十六日に農水省が発表したBSE(狂牛病)関連対策のうち、農家の経営対策は、大きく分けて三つ。(1)生産者団体が行う調整保管への支援、(2)「肉用牛肥育経営安定対策事業」(マル緊事業)の拡充など肥育経営対策、(3)肉用子牛補給金制度の特例措置の実施など子牛経営対策。このうち(2)(3)が損害補償と言える部分です。しかし、どちらも従来型の延長で不十分と言わざるをえません。

 最大の問題は、農家が実際に補償金を受け取る時期。一部を除けば、来年二〜三月になる見込みで、それまでは、一・六%のつなぎ融資で乗り切れという無責任ぶりです。

 (2)のマル緊事業は、農家が四分の一出資した資金から、価格の下落で割り込んだ家族労働費の八割を補てんする制度。これにBSE特別対策として、物財費さえも割り込んだ場合、その全額を国が補償します。物財費分は、マル緊事業未加入者も受け取ることができ、十月分は十二月中旬に支払われる予定。

 同制度では、何の責任もない農家が、最低二割の賃金カットを被ることになります。しかも全農家がマル緊事業に加入しているわけではありません。この点について農水省の担当者は「事業の加入は柔軟に行うよう指導している。県の畜産会などに相談してほしい」と回答しました。

 (3)は、指定市場の子牛の平均価格が保証基準価格(黒毛和種で三十万四千円)を下回った場合、その差額を補てんするというもの。さらにBSE特例措置として、従来は飼養頭数を増やした農家に限っていた奨励金の上乗せを、全農家対象に広げました。

 しかし、BSE特例措置は肉専用種のみで、乳用種や交雑種(F1)は対象外。これでは乳用種やF1の肥育農家はもとより、酪農家の重要な副収入になっているヌレ子の暴落対策にもなりません。

 また交渉では、「へい死牛の処理費用が一万円から五万円に、五倍にはね上がった」(神奈川)、「いきなり引き取りを拒否されて困っている」(群馬)などの実態が出され、緊急の対策を要望。全国約三千の焼却施設のうち、死亡牛の受け入れが可能な施設は、わずか六十六しかありません(11月14日公表の環境省調査)。農水省も予算をつけていますが、当面の対応が不可欠です。「せっかく借りた融資が強制的にエサ代金として回収されてしまい、経営資金に回せない」「現場の要望に迅速に応える“駆け込み寺”のような窓口が必要」といった声も。これに対して担当者は、「県に相談したうえで、畜産計画課資金班(電話〇三―三五〇二―八一一一内線三八五六〜七)に知らせてほしい」と述べて、自治体や農協に対して柔軟な対応を指導することを約束。「農家の声を踏まえて対策を充実させていく」と回答しました。


 農水省のBSE(牛海綿状脳症=狂牛病)対策

・検査・監視体制の強化……………………………百四十六億円

 農場段階でのBSE監視体制の強化、牛の総背番号制の導入、食肉センターでの危険部位の焼却処理の推進、生産者団体が行う、検査開始前にと畜された牛肉の市場隔離への支援。

・農家経営対策………………………………………四百八十三億円

 枝肉価格が安定基準価格(一キロ七百八十円)を下回った場合に生産者団体が行う調整保管への支援、肉牛価格が物財費を割り込んだ場合の差額の補てん、肉用子牛補給金制度の特例措置の実施、農協などが行う出荷調整への支援。

・農家、食肉関係業者への緊急融資…五億円(融資枠五百二十七億円)

 利子一・六%、償還期間一年、無担保。

・肉骨粉等の処理の推進……………………………三百七十六億円

 肉骨粉の焼却処理の推進、へい獣処理施設の整備。

・BSEに関する知識の普及、安全性のPR……………十一億円

・検査開始までの出荷繰り延べに対するエサ代支援……二十億円

(新聞「農民」2001.11.26付)
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2001年11月

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