「農民」記事データベース20011126-518-03

WTO閣僚会議 時期ラウンド開催を決定

すべての交渉はこれから

途上国の抵抗で会議は難航


 十一月九日から十四日までカタールの首都ドーハで開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、とりあえず次期多角的貿易交渉(新ラウンド)を立ち上げることを決めました。一応の交渉期限は二〇〇五年一月一日までの約三年間。

 テロに備えてガスマスクを持参したアメリカ政府代表団は「“シアトルの失敗”を繰り返さない」「テロとたたかうために、貿易の自由化を進めなければならない」などと、テロに便乗したキャンペーンを展開し、新「ラウンド」立ち上げを急ぎました。

 しかし、シアトル以来、発言力を増している発展途上国の強い抵抗と、農業保護の撤廃を断固として拒否したEU(ヨーロッパ連合)のねばりで、会議は最後まで難航。「新ラウンドをめぐる交渉は、これで二度続けて異常な混乱が起きたことになる」(「東京」十一月十五日)と言われる実態でした。

 会期を一日延長してまとまった閣僚宣言は、かなりの部分がどうにでも解釈できる“玉虫色”で、作成に携わった交渉担当者が「百点満点の五十〜六十点」(「日経」十一月十五日)と評価せざるをえないシロモノ。シアトル宣言案が英文で七十数ページだったのに対して、ドーハ宣言はわずか十ページ。もともと抽象的だったのが、さらにあいまいになり、新ラウンド立ち上げを決めたものの、交渉はすべてこれからというのが実態です。


農 業

今後の交渉戦略次第

 焦点の一つになった農業では、オーストラリア・カナダなどが提出した農産物と工業製品を同列に扱って完全自由化・関税撤廃をめざすという乱暴な要求はしりぞけられたものの、「市場志向の貿易体制の確立」を掲げ、自由化、国内助成削減、輸出補助金削減をいっそう推し進める方向が打ち出されました。

 武部農相は「満足すべき内容」などと手放しで評価していますが、とんでもありません。まして、事前のブッシュ・小泉往復書簡では「農業貿易の改革が中心議題」として同調を迫るブッシュ大統領に対し、小泉首相は「農業の多面的機能など議論を招きうる論点は提起しないよう努めてきた」などと、アメリカに気兼ねした弱腰外交ぶりを告白する始末(「朝日」十一月十一日)。

 EUの抵抗などによって農業交渉は「結果を予断せずに」、つまり自由化や関税引き下げ、国内助成削減などは今後の交渉にゆだねられることになりました。

 したがって、日本政府は「農業協定改定はとうてい不可能」などという弱腰をただし、いまこそ農業交渉の戦略を立て直すべきです。とくに(1)米関税化・ミニマム・アクセスの廃止、(2)食糧主権と農業の多面的機能を尊重し、条件が異なる世界各地の農業が共存できる新たな国際秩序作りを要求すべきです。また、WTOに加盟した中国に対しては、協定違反が明確なセーフガードに対する報復措置をやめるよう要求し、三品目のセーフガード本格発動、それ以外へのセーフガード発動を堂々と行うべきです。(閣僚宣言要旨、発展途上国の動向とNGOの運動などについては続報)

(新聞「農民」2001.11.26付)
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2001年11月

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