「農民」記事データベース20011119-517-10

貴重な干潟

“三番瀬”守る運動実った

千葉県知事 埋め立て白紙撤回

 青い空と青い海、そして空にはたくさんの鳥たち、足元にはこれまたたくさんの海の生き物。たくさんの人たちが貝を掘り、子どもたちが自由に遊ぶ…。千葉県の船橋市、市川市にまたがる三番瀬は、「生命のゆりかご」といわれる、東京湾に残った貴重な干潟です。僕は、千葉県農民連の専従として働くかたわら、「三番瀬を守る会・若組」の一員として活動しています。
(千葉農民連 岩野哲)


 多様な生物が住む渡り鳥の中継地

 今年三月の知事選挙で当選した堂本暁子新知事は、九月二十六日の本会議で、この三番瀬の埋め立て計画を白紙撤回すると明言しました。これは画期的なことです。同時に、これで気を抜くことなく、「将来にわたって三番瀬を守っていく」、この声をさらに大きくしていくことが大切だと感じています。

 千二百ヘクタールの三番瀬には、鳥類八十九種、動植物プランクトン三百二種、ゴカイなど底生生物百五十五種、魚類百一種、合計六百四十七種の生物が確認されています(千葉県「三番瀬補足調査専門委員会」報告、九八年九月)。さらに三番瀬は世界的に見て貴重な渡り鳥の中継地にもなっています。

 この三番瀬を埋め立てる計画を推し進めてきたのが、今年三月まで五期二十年続いた沼田・自民党県政です。九三年に出された七百四十ヘクタールの埋め立て計画の中身は、バブルそのもので、国際文化都市用地など、どれをとっても過大でムダなものでした。

 三十万の署名集めて県民が運動

 この計画に対して、「三番瀬を守る署名ネットワーク」(七十団体と個人)は、埋め立て計画の撤回を求める三十万人分の署名を集めました。こうした反対運動によって、九九年に、埋め立て地を七分の一に縮小し、下水道処理施設などを建設する見直し案が出されたのです。

 しかし三番瀬はそもそも十三万人分の下水処理能力をもっています。それにひきかえ処理場は、水に溶けた窒素やリンをほとんど除去できないうえに、建設費用の面でも大きな問題を抱えています。私たちは、今ある処理場の改良で十分だと考えていますし、むしろ欧米で行われているように埋め立て地を湿地に復元すべきだと主張しています。

 豊かな自然守るためこれからも

 僕は、去年三月に新潟・魚沼の実家から千葉に移ってきて、しばらくの間は「千葉も都会だ」と思っていました。そんな時に、最初の友だちが連れて行ってくれたのが三番瀬。これが三番瀬との初めての出会いでした。いきなり飛び込んできた自然。そして、この自然が開発によって潰されようとしているという説明。「この自然を絶対に守らなければならない」と思い、「若組」に入りました。

 全国のみなさんにも、ぜひ三番瀬に足を運んでいただき、三番瀬のことをもっと知ってもらい、この豊かな自然を未来の子どもたちに残す運動に加わってほしいと思っています。

(新聞「農民」2001.11.19付)
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2001年11月

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