イタリア農村紀行食を見つめる旅(下)スローフード運動発祥の地を訪ねて
広い米地帯の有機米農家を訪問「コメだ! コメ」「スゲーたくさん作ってんなー」――参加者が思わず声をあげたのは、たわわに実った稲が広がる光景。訪問した百三十ヘクタールを耕作しているという有機米生産農家の田んぼには雑草が生え、長い毛の付いた穂が実っていました。 「これはリゾット用のコメだ。三年間モミで貯蔵し出荷する。リゾットには、スープの良い味を吸収し、くっつかないものがいい」と説明する生産者は「米農家は誰だ、質問してくれ」と何度も叫びながら案内してくれました。そして「私の米は、EUの厳しい有機基準に認められたので、高い価値を得ている。しかし私は、自然が好きで、いい仕事をするために有機農業をしているのだ」と、誇らしげに話してくれました。
ワイン農家とピエモンテーゼ米作りが盛んな平野から南西に移動すると、小高い山と小さな谷が続きます。山の上には、必ずといっていいほどレンガ造りの古い教会や町、塔などがあり、山の斜面に植えられたワイン用のブドウはちょうど収穫のまっ最中でした。「ワインの品質を守るために、面積当りで、これ以上収穫してはいけないという基準が決められている。私は、より良いワインを造るため、基準の八割まで収量を抑えている」。こう話すのは、有機栽培でブドウを作り、そのブドウでワイン造りをしている若い農家。病気の発生を抑えるため、温度、湿度の変化を記録し、いかにきめ細かい注意を払ってブドウを栽培しているか説明しました。 スローフード協会で紹介されたピエモンテ原産の牛、ピエモンテーゼを肥育する農家も訪問しました。「この牛は栄養価が高く、おいしい肉ができる。自分たちも品質に誇りを持っている」と若い兄弟は言います。 狂牛病は心配ないかと質問すると、「そんなことはあり得ない、地域のエサを使っている。自分達は昔からこの牛を育ててきた」と熱っぽく話し始めました。生産を続けるために、厳しい有機の基準を受け入れて、EUと政府から多少の補助を受けているとのこと、しかし、違反が見つかると倍返しの厳しいペナルティーがあることなどを説明しました。
もの作りへのこだわり日本の農民と、初めて訪れたイタリアの農村で感じたことは、イタリア農民の農業への誇りと、生産へのこだわりでした。そして、物を作る農民同士の国を越えた連帯感でした。食を守り地域を守る運動とあわせて、生産点での運動の大切さを強く感じました。(おわり)
(新聞「農民」2001.11.12付)
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[2001年11月]
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