損害の補償と食の安全求めて各地で農民・業者・消費者が共同狂牛病「共同してこの苦境を乗り越えよう」――狂牛病の発生によって被害を被っている農家や食肉関連業者、不安を抱く消費者の共同が各地で生まれています。狂牛病は、国民の安全と健康をないがしろにして、食料を輸入に頼ってきた国の失政によってもたらされたもの。その責任を国に認めさせ、損害の補償とともに、食の安全を求める運動が広がっています。
さらに食と農を守る運動大きく京都で交流学習会「農民連や食健連がとりくんでいる食の安全を求める運動をもっともっと大きな力にしていかなければ…」。京都府久御山町で焼肉を中心とした大衆食堂を営む内田公昭さんは言います。内田さんの店は狂牛病の発生によって、「仕入れを四分の一に減らしても半分も余るような状況。以前は順番待ちのお客さんが並んでいたのに、今は家族連れがまったく来なくなった」。城陽市・久御山町の民商の会長を務める内田さんはエリア内の百二十軒の関連業者にダイレクトメールを送り、被害の実態を調査しました。「焼肉以外のメニューもある私の店はまだ救われている。一日の売り上げが一万円にも満たない焼肉専門店もあり、そのうちの一軒が一昨日、店を閉めた」。 京都食健連は、農家、業者、消費者が参加して、狂牛病の発生直後と十月十一日、二度にわたって京都府と交渉。そのなかで出された要求をまとめて実現させようと、十一月二日に緊急学習交流会を開催しました。「イギリスでは脳やせき髄を混ぜた肉が、ファストフードなどで使われていたと聞く。やっぱり身元のはっきりした肉を食べることが大事」と消費者。京都農民連の上原実書記長は「狂牛病事件をきっかけに、攻勢的に輸入食料・農畜産物に頼る危険性を解明していくことが必要」と強調しました。 内田さんは「被害を被っている業者、農民、それに不安を抱いている消費者を巻き込んで、日本農業と食の安全を守る大きな運動にしていきたい」と意気込んでいます。
学校給食に「飛騨牛の日」生産者の思い実る岐 阜「われわれ和牛生産農家は絶対に肉骨粉を使わない。子どもたちに安全でおいしい地元の飛騨牛をたくさん食べてほしい」――飛騨牛の産地、岐阜県金山町で百三十頭の繁殖・肥育経営を営む矢嶋秀己さん(48)。矢嶋さんが副会長を務める飛騨肉牛生産連絡協議会などの要請によって、学校給食で飛騨牛を食べる「飛騨牛の日」が実現しました。県・市町村・JAが、従来使用されていた輸入牛肉との差額を三分の一ずつ助成するというもの。農家は、風評被害の払拭につながればと期待しています。 矢嶋さんは「狂牛病は、農水省がもたらした人災だ」と、国の失政を厳しく指摘します。「これから年末にかけては、牛肉の最需要期。それなのに例年の半分しか売れる見通しがない」。産地はいま、先の見えない不安が渦まいています。 そうしたなかで、ブランド牛肉の産地でありながら、飛騨地方の半数の自治体が「学校給食会」指定のオーストラリア産輸入冷凍牛肉を学校給食に使っていることが判明。「地元の牛肉を使え」という要請が、またたく間にすべての自治体に届けられました。 「『私が育てた牛です』と言うと、お客さんは喜んで買ってくれる」と、飛騨牛のPRに参加した矢嶋さん。十一月には農水省に対する要請も予定しています。 (岐阜県農民連 中島新吾)
「国は損害を補償せよ」の声が相次ぐ岡 山岡山農民連は、十月十八日、と畜場関係者や卸、小売、畜産農家など百人と相次いで懇談。「国は責任を認めて、損害を補償せよ」という声が相次ぎました。津山市にある食肉処理センターは、市が助成していると畜場ですが、八人の職員の給料は出来高払いで、と畜頭数の減少によって未払いが生じています。「最低限の給料の補償をしてほしい」と、と畜場関係者。 肉屋の店主は「売り上げは三割に減った。雇い人の給料や借入金の返済を補助してほしい」と。畜産農家からは、市場手数料や、預託金(子牛を買った時に借りたお金)の延滞料への補償を求める声があがり、これらをまとめて、十月二十二、二十五日に中国農政局と岡山県に対して要請しました。 (岡山農民連 坪井貞夫)
子牛価格7万5千円下落 政府が全額補償を宮 崎狂牛病発生後の子牛価格が、過去三年間の平均価格と比べて七万五千円も下落していることが、宮崎県農民連の調べでわかりました。十月十五〜二十四日に開かれた、宮崎、都城、小林の三市場の子牛価格は平均で三十三万八千円。九八〜二〇〇〇年度の平均価格四十一万三千円に対して二割近くも下落し、農家は「こんな相場ではエサ代も出ない」と悲鳴をあげています。宮崎県は、全国で有数の畜産県ですが、母牛を育てて子牛をとる繁殖経営は規模が小さい農家が支えています。畜産王国崩壊の危機に、県内の農協などからも販売価格の補てんを求める声があがっています。 宮崎県連の村尻勝信書記長は、「都城市は市独自の価格補てん対策を行うことを決めたが、一頭一万円が上限で財政規模も限られている。狂牛病発生の責任はすべて国にあるのだから、過去三年間の平均価格との差額を国が全額補償すべき」と語っています。
(新聞「農民」2001.11.12付)
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[2001年11月]
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