「農民」記事データベース20011112-516-01

農水省、気は確かか!

計画流通米制度の廃止、戦前並の米政策を検討

 「現行の計画流通制度を廃止し、新たな枠組みを構築する方向で検討する」――石原食糧庁長官は、新食糧法を廃止し、米の生産・流通に関する政府の責任を全面的に放棄する方針を表明しました。十月二十四日、自民党の農業基本政策小委員会で述べたもの。

 農水省・自民党が二人三脚で検討中の「米政策の総合的・抜本的見直し」では、“どうせ計画流通規制をかけても効かないのなら、規制を抜本的に緩和する”という方向を打ち出していましたが、「緩和」どころか「廃止」を打ち出したところに新たな特徴があります。

 政府・自民党は、十一月下旬〜十二月上旬にも最終方針を固め、来年の通常国会に新食糧法の大改悪案を提出するとしており、事態は緊迫しています。


 戦前の米投機復活、輸入管理も不可能に

 新食糧法の骨格は、政府による米流通管理をやめ、計画流通米(自主流通米と政府米)を流通の主体として、政府が部分管理を行うこと。

 計画流通制度を廃止することは、昭和十七(一九四二)年に成立した食管法以前に歴史の歯車を逆回しにし、大資本の米投機や生産者価格の買いたたきと消費者価格のつり上げを野放図に認めることを意味します。

 自主流通米がなくなれば自主米市場もなくなり、現在、投機につながりやすいとして禁止されている「先物取引」も解禁され、戦前の正米市場の復活さえありえます。また、国内流通の管理・規制を前提に成り立っている米の「国家貿易」制度の維持さえ危うくなり、米の輸入コントロールは不可能になります。

 許すな! 異常な米つぶし政策

 農水省が全国八カ所で開いた「意見交換会」で、政府案は、農協や自治体、農民、消費者の猛烈な反発をかいました。

 たとえば「輸入の一方、生産調整とは何事か。改革というなら、まずその矛盾をただすことが先決」(山形県中)、「いったん白紙に戻せ。どうしても見直すというなら農協はやらない。生産調整の推進も何もかも行政だけでやれ!」(秋田・JA鷹巣町)などなど。

 食糧庁長官の“爆弾発言”は、これに対する開き直りというよりは、米価暴落や百万ヘクタールを超える減反という事態を打開する展望も能力もないことを自認したうえで、破れかぶれで打って出た“狂気の沙汰”。

 同長官は、米関税化(完全自由化)法案の直接の責任者であった経済局長時代の一九九九年、日本共産党の中林よし子衆院議員に「米のミニマム・アクセスが『義務』だというが、一体WTO協定のどこに、そんな規定があるのか」と問いただされて何度も立ち往生し、WTO協定集をめくったあげくに「どこにも義務だとは書いていません」と答えた人物。

 「高級官僚」ならぬ、この程度の“低級官僚”が、小泉「改革」と結託して進める米つぶし政策――。セーフガードつぶしといい、狂牛病をめぐる体たらくといい、この政権が、日本の農業と食糧にかけている異常な攻撃は、彼らの強さを示すものではなく、深刻な行きづまりのあらわれです。

 大いに宣伝し、運動を急速にもりあげるときです。

(新聞「農民」2001.11.12付)
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2001年11月

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