韓国のミカン産地済州島生産農家守る姿勢に日韓の違いを実感産直協「柑橘部会」が視察
産直協「柑橘部会」の一行、二十人は九月十三〜十五日、韓国・済州島のミカン栽培を視察しました。
熊本県の生産量の5倍を作る島朝鮮半島の南に浮かぶ済州島は、ミカンと観光の島。ミカンの産地は島の南側に集中していて、生産量は九八年五十四万トン、九九年六十三万トン、二〇〇〇年は六十八万トン。熊本市とほぼ同じ人口(六十万人)で、熊本県全体のミカン生産量(十四万トン)の五倍近くも作られているというのですから、規模の大きさが想像できると思います。
デコポンの技術高く、積極的済州島のミカン園は、なだらかな平地ばかりで、日本のような山成や階段畑などは全然見かけません。海から吹きつける風が強いために、豊富にある石でミカン園を囲んで防風対策をしています。説明によると済州島の石垣は万里の長城より長いとのこと。ミカン園は一般的に密植気味ですが、荒廃園がほとんどなく、勢いを感じました。交流した二軒の農家は、どちらもハウスでデコポンを作っています。技術は非常に高く、積極的な経営方針を抱いていました。「農業で努力すれば道が開ける」という確信がみなぎり、まぶしく見えました。
韓国政府が生産者価格を守る済州柑橘試験場では、韓国の柑橘政策の説明を受けました。基本戦略は、柑橘を輸出品目として位置づけて、単価の低い露地ミカンは、カナダ、アメリカ、ロシアへ、単価の高いハウスミカンやデコポンは日本へということのようです。 また今年度は八万トンの過剰を予想しているそうですが、済州島で五万トン、本島で三万トンを加工に回して生産者価格を守るとのこと。輸入しながら減反させる日本政府とは違って、生産農家を守る姿勢がうかがえて、その結果が農家の強い生産意欲に表れているのだろうと感じました。 説明してくれた農学博士から、「日本の政治家や商社がたくさん来て、日本にどんどんミカンを送ってくれと言って行く」と聞いて、「いったいどこの誰がそんなバカなことを言うのか」と怒りで頭に血がのぼりました。
済州島農民の強い意欲に驚きこの視察は、韓国に光センサーが五十台導入されるという情報に端を発し、日本に五十万トン以上のミカンが押し寄せるのではというウワサから企画されました。済州島のこじんまりとした選果場には小さな光センサーがありました。センサーの心臓部は日本から輸入し、外部は韓国の大学で開発したとのことです。しかし、視察してみて、韓国にはまだ日本に大量に輸出する柑橘の量はないと思いました。高品質なものは脅威になるかもしれませんが、全体としてミカンの味が日本人の口に合うかどうか疑問です。 同時に、韓国農民のやる気の高さには驚きと羨望を感じ、あらためて農家の作る意欲をそぐ日本農政の転換が必要だと痛感しました。 (熊本・大矢野有機農産物供給センター 青山 司)
(新聞「農民」2001.11.5付)
|
[2001年11月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2001, 農民運動全国連合会