許すな 小泉首相のセーフガードつぶし
日中二国間のヤミ取引を優先、セーフガード本発動回避へ――長ネギ、シイタケ、畳表の暫定セーフガード発動期限切れを十一月八日にひかえ、今、小泉内閣は本発動回避に急転回しています。 十月二十五日に開かれた農水・財務・経済産業三省の関係閣僚会議では、できるだけ早い時期に日中協議を再開すること、十一月八日の期限までに協議が決着しない場合には本発動を回避することを決めました。 政府は九月末までは「十月下旬には三品目セーフガードの本発動移行を決める」と明言してきました。しかし、農民連・食健連などが十月二十四日に行った農水・財務・経済産業省交渉では「十一月九日以降、いかなる措置をとるか検討中」(農水省)と、公約を白紙に戻す答弁に終始。これは暫定発動が本発動を大前提にしたものであることも、わずか三週間前までの言明も忘れたかのような悪質な開き直りです。 一方「本発動のための調査作業は大詰め。いつでも審議会にかけうる段階まできている」(財務省)と、関係省庁の作業は当初予定通りに進んでいることも明らかになりました。
セーフガードをいけにえに本発動移行の公約を裏切って二国間協議を優先する路線を敷いた張本人は小泉首相です。十月八日の“日帰り訪中”では、主題の靖国参拝問題の釈明はそっちのけで「セーフガード問題は対話により早期に解決したい」と提案。続く二十一日の首脳会談でも「話し合いでの解決をめざす」ことで合意しました。本発動回避の動きが出てきたのは、ここからです。一般論として、日中両国が話し合うことは必要なことですが、セーフガード問題をめぐっては事情がまったく異なります。 第一に日本のセーフガード発動はWTO協定にもとづく当然の権利を行使したものであって、中国がこれに対し自動車や携帯電話で報復するのは、WTO協定が厳しく禁止していることです。間もなくWTOに加盟しようとしている中国が、協定違反の報復措置をとるなど許されないことは明白。日本政府も「WTO協議の際に、中国政府の違法性を厳しく指摘している」(農水省)のです。 違法な言いがかりを「話し合い」で解決しようという小泉政権の態度には一片の道理もありません。それどころか、セーフガード本発動をいけにえにして、靖国参拝に対する中国の正当な批判をかわすものと言わざるをえません。
「ヤミ取引」では実行性ない第二に「二国間で本発動に匹敵する合意を作る」(経産省)かのように言っていますが、これには実効性も道理もありません。一九九三年にニンニク・ショウガの輸入急増が大問題になって、セーフガード発動の機運がもりあがりましたが、日本政府は中国に「輸出自主規制」を呑ませてお茶をにごしました。しかし、その結果は図〔図はありません〕のように無残なものでした。輸入が減ったのは最初の一〜二年だけ、あとは輸入が急増したのです。二国間協議で「両国が納得がいく輸入枠の設定」が話し合われるといいますが、効果がないことはすでに試されずみです。 しかも、二国間のヤミ取引である「輸出自主規制」はWTO農業協定第四条違反です。WTO以前の九三年はともかく、いま「輸出自主規制」を日中両国間で話し合うことは、国際的批判を招くことは必至です。 WTO協定に反する報復に屈して、何の実効性もなく、おまけにWTO協定違反の“ヤミ取引”に賭けてセーフガード本発動を見送る――ここには何の道理もありません。 さらにアメリカの反発を恐れて、玉ネギなどの輸入急増・価格低下品目に対するセーフガード発動については「監視を続ける」というだけで、何の手も打とうとしていません。
裏で糸引く日本の商社野菜輸入激増の裏で糸を引いているのは日本の商社です。小泉政権のセーフガード本発動見送りのねらいは、報復を受けている自動車産業の利益や、こういう大商社の利益。「業界の中には、暫定措置の期限切れと共に一気に輸入を増やし、再び関税が上がる本発動に備えるところが出てくる」(日本農業新聞十月二十四日)おそれさえあります。 農民連は、こういう悪徳商法を許さない監視と、日本の商社による開発輸入に対する規制を要求します。
小泉首相に緊急の抗議と要請を三品目の暫定セーフガード発動が決まったのは、小泉内閣が成立する直前。小泉氏は首相になったとたんに「セーフガードはあくまで暫定的なもの」と言い放ちました。こういう小泉首相が外交的思惑や日本の大資本の利益を守る立場からセーフガード本発動に対する反転攻勢に乗り出した――これが現在の事態です。しかしセーフガード本発動は「審議会にはかれば、すぐにでもできること」(財務・農水省)。 セーフガードの本発動、三品目以外の輸入増加・価格低下品目に対するセーフガード発動のたたかいは、まさに正念場です。 農民連・食健連は、当面次ような行動を呼びかけています。 (1)小泉首相に対し、抗議と緊急要請のEメール、ファックス、葉書を。 (2)農協、農業委員会、実行組合、自治体など広範な関係団体に共同の申し入れを、緊急署名を。 (3)暫定発動が期限切れになる十一月八日に、農水省・農政局包囲行動を。
(新聞「農民」2001.11.5付)
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[2001年11月]
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