12人の“農業体験”受け入れて福島市・佐々木智子さんの手記
福島市の酪農家・佐々木智子さんは、この八月、九月に中学生と高校生十二人を農業体験で受け入れました。その体験記が寄せられましたので、紹介します。
朝・昼の弁当持ち通ってきた中学生まだ朝もやの消えぬ五時半頃、「おはようございます」と五人の中学生が「地域に学ぶ体験活動」で九月三日から五日間、二食の弁当を持ちマイクロバスでやってきました。東京の男子高校生二人が八月一日から三泊、引き続いて地元の畜産科の高校生男子二人、女子三人が三日間、さらに中学生男子二人、女子三人がわが家を訪れました。東京の高校生は裏山を見上げて「全く違う風景」と言い、「野菜をとってきて」と頼んだら、「とれすぎて重い、重い」と、自家用のキュウリやナスをとってきました。「小さい時にニワトリ係をしていたことがあるので、ニワトリの世話はまかせて」と言った高校生が、逃げたニワトリを追い掛けて子どもの頃を思い出したのか楽しそうでした。 牛舎では体力のいる作業が多く、「暑くて大変ね」と声をかけると、「平気、平気」と笑顔がかえってくる。 野菜料理が「うまい」と言われると、せっせと農家ならではの料理ばっかりになってしまいます。 夜九時には電灯が消えて、明朝に備えていました。帰る朝は部屋の掃除もしっかりやってから、次のキュウリ農家へ移動、さらに果樹農家へと、たくさんの汗を流しての帰京でした。
雨天には“食の安全”ビデオなどで学習も地元の高校生は全員農家でなく、先生の送迎で朝九時から夕方まで搾乳をしました。一日目は、天候が良かったので、初めてというジャガイモおこしと大豆の草むしりをやってもらいました。「畜産以外の作業で悪かったかな」と言ったら、「なんでもやります」と返事がかえってきました。同じ高校とはいえ、初めて話をする人もおり、一日目が終わる頃には楽しそうに話していました。雨模様の日が多くて、外の作業ができない時は、何をしようかなと思うこともしばしばで、工場の牛乳のビン詰めや台所で豆腐を作ったりしました。それでも時間がある時は、県連から急いで届けてもらった「あぶない! あなたの食と健康」(食健連・農民連の制作)のビデオや以前NHKで放映された「大豆の会」の録画も見てもらいました。
農業や食べ物のこともっと知ってほしい三日目が終わった時、高校生から「牛乳のできるまでの一環した流れがわかった」との感想がありました。中学生たちは給餌、搾乳、掃除をやってから朝食なので、お腹はペコペコ。副菜の野菜料理もよく食べてくれるので、作る方も力が入ります。 中学生が大きな押切りを使ってのワラ切り作業を何事もなく終えると、ホッとしたものです。豆腐作りをしていたら、お豆腐屋さんの息子さんがいることを知って大あわて。逆にみんなで工場での豆腐作りや苦労なども聞くことができました。 中学生にはむずかしいかなと思いながら、「テレビでは見られないものだから」と食事をしながら農民連のビデオを見てもらいました。帰りのバス代を安くしようと、重たいカボチャやジャガイモを下げて三キロも歩くしっかり者の中学生に拍手したいです。 農業体験を受け入れるのは大変ですが、惰性になりがちな作業を見直し、指導する立場になると、気も引き締まり、プラスの面も多いです。体験したいという人の願いにも応えられ、何よりも農業のこと、大切な食べ物のことを知ってほしいという思いです。来年の夏も新たな出会いを楽しみにしています。
(新聞「農民」2001.10.29付)
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[2001年10月]
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