「農民」記事データベース20011015-512-01

テロ根絶 法と理性で!

アメリカ報復戦争開始

女性たち声高くデモ行進

関連/道理そっちのけ首相、法案ゴリ押し


 アメリカは十月八日未明、アフガニスタン各地に対し、巡行ミサイル・トマホークや爆撃機・戦闘機による軍事攻撃を開始しました。「テロ根絶は国連憲章と国際法にもとづく裁きによってこそ」「軍事報復は新たな報復を生むだけ」という国際世論を押し切っての報復戦争開始です。

 ブッシュ大統領やアメリカ政府は、攻撃がタリバン政権の軍事施設などに限定されると強調し、さらに食糧や医薬品など救援物資の投下を行うための制空権確保が目的だとも説明し、国際世論の批判をかわすのに必死です。

 しかし、この攻撃が無実の市民を犠牲にしないという保証はまったくありません。テロ攻撃の直接の目標にされたニューヨーク市民の間にも、戦争によって無実の人々が犠牲になることへの懸念の声があげられているほどです。

 さらに“救援物資を届けるための空爆”という釈明のむなしさは明瞭です。アフガニスタンの飢餓は、戦火によって農地を手放し難民になる人々が増えていることこそが原因であり、軍事報復は、こうした動向に拍車をかけるだけです。

 国連憲章と国際法にもとづく裁きという手段がつくされないまま、軍事攻撃と戦争に突き進むやり方は、けっして許されるものではありません。

 また、アメリカの軍事攻撃を「強く支持する」という態度を打ち出し、自衛隊海外派兵新法を本格的な国会審議もなしに急ぐ小泉政権の動向にもきびしい批判が必要です。

◇  ◇  ◇

 「もう戦争で子どもたちを殺さないで」――軍事攻撃開始三日前の十月五日、横断幕やプラカードを掲げ黄色のハンカチ、リボンを着けたお母さんたちが、東京・銀座をデモ行進しました。「女性の憲法年」連絡会が呼びかけたもの。参加者はデモ行進の後、「私たちの思いをもっと伝えて」と、マスコミ各社に申し入れました。


戦火でなく食糧、医療、教育を

高橋マス子農民連女性部長

 「こんなにひどい国があるとは。この国には希望が感じられません」――ユニセフ親善大使・黒柳徹子さんがテレビで述べた言葉が重く心に残っています。二十一年におよぶ内戦、三年続きの干ばつ。そのうえタリバンは、人々の生活を厳しく規制し、女性は外出の自由さえありません。

 それでも避難民キャンプにある学校では、子どもたちが大きな瞳を輝かして学び、地雷によって足を奪われ、リハビリに励む少年は「また羊を追いたい」と語っていました。今この国に必要なのは、戦火ではなく、食糧と医療、教育です。

 テロ発生後、厚木基地で終日ものすごい爆音をとどろかせていた戦闘機がこの国を空爆したかと思うと、いても立ってもいられません。テロには国際的な協力で法による裁きを!


衆院本会議傍聴

道理そっちのけ首相、法案ゴリ押し

 テロ対策に名を借りた戦争参加法案が、国会に政府与党によって提出されようとするなか、十月二日、衆議院本会議が開かれ、日本共産党の志位和夫委員長が代表質問しました。衆院本会議場に足を運んで、傍聴しました。

(満川)

 志位氏が登壇すると、議場全体に形容しがたい緊張が走ります。志位氏はまず、アフガニスタンでは現在五百万人が飢餓状態にあり、とくに子供が「生死の境」にあるというユニセフなど国連機関の共同声明を紹介。「報復戦争を引き起こせば、罪のない多数の市民が新たな犠牲者になる。首相はこのような危険をどう認識しているか。テロ根絶のためには罪なき市民が犠牲になってもやむをえないというのか」と、質しました。

 そして、「テロ根絶には報復戦争ではなく、国連憲章と国際法にもとづく裁きを」と主張し、容疑者の特定や厳正な裁判など具体策を提案。アメリカの軍事行動の国際法上の根拠と、憲法の平和原則と参戦法の関係について質しました。

 これらに対する小泉首相の答弁は――。「報復戦争とよぶべきではない」「テロに対するたたかいは武力行使だけではない」――真正面から答えた部分は、ほとんどありませんでした。

 原稿棒読み、あまりに的外れな首相の答弁に、議場から「質問に答えろ」という声があがりました。

 アメリカの軍事行動の国際法上の根拠についても、志位氏があらかじめ「“アメリカが判断するだろうから、それをみて日本も判断する(九月二十日の党首会談での首相の返答)”では、主体的な判断とはいえないではないか」と念を押しているにもかかわらず、首相は「アメリカから得られる情報を踏まえて、我が国としての対応を決定する」と、そっくり繰り返す始末。アメリカべったり、道理そっちのけで参戦法を強行しようとする政府与党の姿勢を示していました。

 また、驚いたのが志位氏への、与党席からの野次・怒号。しかし、志位氏が核心に迫った部分では議場がシーンとし、道理ある意見の力を痛感しました。

(新聞「農民」2001.10.15付)
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2001年10月

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