「農民」記事データベース20011001-510-07

安い農産物の向こう側

タイの農村はいま

山本 博史


甦ったCPグループ

 日本向けのエビとブロイラーで高度成長をとげ、東南アジア最大のアグリビジネスとなったCP(チャラーン・ポークパン)グループの歴史をたどってみましょう。

 一九二一年、バンコクの中国人街に、チャラバノン一家の二兄弟(謝易初と謝少飛)が商店を創業、香港から野菜の種子や肥料を輸入して販売、タイから鶏卵を輸出しました。

 第二次大戦後の五三年に養鶏用飼料工場を開設、長男がチャラーン・ポークパン・ストア(正大荘行)を開いて飼料原料輸入と配合飼料販売を始めます。六〇年代にはインテグレーション方式による畜産業にとりくみ、飼料・畜産加工の会社を次々と設立、配合飼料で国内市場の五〇%を占める最大メーカーとなりました。七〇年代からは、ブロイラーの契約飼育と同じ手法でエビ養殖の事業化にも成功し、ケンタッキー・フライドチキンやセブン・イレブン、プラスチック製品、給油所など事業の多角化を進めています。一方で、中国をはじめアジア各国にも進出し、中国では飼料・ブロイラーのほか、オートバイ、ビール、フライドチキンなど幅広い事業展開を実現しました。

 ところが、九七年の通貨危機に直面して、香港に設立していた持株会社発行のドル社債が債務不履行となり苦境に陥りました。

 中国から一部事業を撤退し、タイ国内でもハイパーマーケットを売却するなどして、本来のアグリビジネスに集中する経営転換を行い、再び甦っています。

 日本の十五分の一という労賃や通貨の下落、近代的な契約関係が成立しないタイ農村の社会条件などを最大限に活用した結果の成長の歴史といえます。

(新聞「農民」2001.10.1付)
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2001年10月

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