「農民」記事データベース20010924-509-11

信州のおばあちゃんと“茶のみ”

吉田文子


 山の幸工房

 北安曇郡小谷村は、新潟に接する豪雪地です。とても料理上手なおばあちゃんがいると聞き、山田ちさとさん(69歳)を訪ねました。

 一昨年の秋に「深山の湯」という日帰り温泉に隣接して「道の駅」ができました。そこで「小谷の特徴のある販売品を作ってほしい」と、ちさとおばあちゃんに白羽の矢が。特産品のまいたけを使って試行錯誤を重ね、「まいたけクッキー」「まいたけかりんとう」を作りました。噛みしめると、まいたけのよい香りが口いっぱいに広がります。

 お菓子作りは大得意のちさとおばあちゃん。でもおいしいまいたけのお菓子を完成させるには、四ヵ月もかかったそうです。

 製品として販売するには、専門のキッチンを作り、保健所の許可を得なくてはなりません。大事に貯金しておいた年金を使って自宅を改造し、「山の幸工房」という八畳ほどのキッチンを作ったのです。こうしておばあちゃん六七歳秋からの「ビジネス」が始まりました。

 近所のおばあちゃんと、毎日朝二時間ほど作業したあと、お茶を飲みます。このお茶の時間がまた、楽しいのです。ちさとおばあちゃんは、そんな話をしながら「ふ・ふ・ふ」と実に楽しそうに、夢いっぱいの少女のようにかわいらしく笑いました。「おやき」も作っていますが、春の連休中には五百個、八月はじめには、九日間で六百六十個も売れ、おばあちゃんのビジネスは好調です。

 仲間と畑づくり

 今から七年前、小谷村では、集中豪雨による大災害がありました。道や線路、多くの家や田畑が流され、一週間もの間、交通がマヒしたのです。

 「生きているなかであん時が一番おっかなかったよ。電気が切れ、ニュースも聞けないから、いったいどうなっているのかも分かんなかったよ。田んぼもみんな土砂でつぶれて、足が震えて、震えて。寝ても震えが止まんなかったさー」。

 それ以来、荒廃していた田んぼを仲間七人で借りて、ジャガイモや大根、野沢菜などを栽培しています。新鮮でおいしいので、道の駅に売り出すと、すぐに売り切れてしまうほどの人気です。二時間ほど畑の作業をした後は、ゆっくりお茶の時間。「ふだんは仲間でゆっくり話をするってことがないだよ。だからみんなで畑をするといいねえ。田んぼより儲かるから、今年は売り上げで日帰り旅行にも行ったよ。楽しかったなあ」。

 人生を楽しむことが上手な、ちさとおばあちゃんと仲間たち。私も見習って、毎日を楽しんで、ニコニコと福のある顔になりたいと思いました。


おやき

 山の幸工房のレシピは“企業秘密”なので、これはちさとおばあちゃんの話に吉田がアレンジしたもの

〈材料12個分と作り方〉

1 ボールに卵(一個)水(五〇cc)サラダ油少々を入れて混ぜ、薄力粉(四百グラム)とベーキングパウダー(小さじ二)を合わせたものをふるい入れる。

2 こねて、硬さを水で調整し、ラップをして、一時間くらい寝かせる。

3 具を作る。キャベツ(六百グラム)を一・五cm角くらいに切って蒸し、絞って辛味噌(大さじ一 夏にこしょうと呼ばれる辛いピーマンを味噌に入れて、味噌に辛味を移したもの)、すりごま(大さじ二)を入れる。塩少々を加えて好みの味にする。

4 2の生地を十二等分して、十三cmくらいの直径にのばし、具を包む。

5 蒸し器の用意をしておく。テフロン加工のフライパンを熱して、油を入れずに、中火で両面きつね色に焼く。

6 八分間、蒸す。

(新聞「農民」2001.9.24付)
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2001年9月

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