「農民」記事データベース20010924-509-09

ラウンドアップ耐性稲

厚労省 承認すれば食卓に


 きびしい暑さも一段落した八月下旬、愛知県長久手町にある県農業総合試験場の試験田を、生産者、消費者、生協組合員らで組織する「中部の会」が見学しました。

 試験田には、東海地方で広く栽培されている早生稲「祭り晴」が出穂し、風にそよいでいます。見たところ何の変哲もない普通の稲ですが、実は日本で最初に栽培され、食卓に上る可能性が高い遺伝子組み換え稲として、日本中や中国などからも注目されている「祭り晴」です。

 この稲は、アメリカの多国籍企業モンサント社が、早くから日本に遺伝子組み換え稲を売り込もうと、日本人の嗜好にあった品種の選定、全国の水田に普及できる栽培方法などの研究を重ねてきたもの。九八年から稲の直播栽培の先進地、愛知県農試と共同研究を進め、「不耕起乾田直播栽培用除草剤耐性稲」として完成させました。

 モンサントが愛知県農試との共同開発を行なった背景には、次のような事情と打算があります。

 モンサントが除草剤耐性稲とセット販売するラウンドアップ(除草剤)は、水に弱く、水田の移植栽培には不向き。そこで、同試験場が開発して東海地方で普及し始めている「不耕起乾田直播栽培」に使っている「祭り晴」を組み換えて除草剤耐性稲にすれば、ラウンドアップを使用でき、除草した後に入水すればよい。しかも、米価の暴落、安い外米輸入、減反拡大のなかで苦境に立つ日本の稲作農家に低コスト・省力栽培用として大いに普及できると計算しているわけです。

 農水省もモンサントの遺伝子組み換え「祭り晴」三品種を五月八日、食用、加工原料用、飼料用として一般ほ場への作付けを承認しました。あとは厚生労働省が食品として承認すれば、日本の水田で栽培され、食卓に登場する遺伝子組み換え稲実用化第一号となります。

 農水省の認可が下りた直後の「中部の会」などが参加した地元説明会で、試験場側は「日本に稲作を残すには、経営規模の拡大、省力でコストを引き下げる直播栽培に除草剤耐性稲を取り入れることが決め手」だと強調し、モンサントの狙いを代弁していました。

 モンサント側は、食品としての安全確認の申請を準備していますが、組み換え稲に対する消費者などの反対が強く、受け入れられない場合には中国で栽培し、商社を使って開発輸入してくる可能性もあり、警戒する必要があります。

(塚平 広志)

(新聞「農民」2001.9.24付)
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2001年9月

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