「農民」記事データベース20010917-508-17

本の紹介

日本農業への示唆に富む

土と共に 日本農業(食糧)のゆくえ

今井正男著


 「今年は数えで七十七歳、喜寿になりました。何かしなければと考え、自分史を書くことにしました」という今井さん。神奈川県の自作農の長男として育ち、少年の頃、小作と地主の関係の矛盾を感じたのが、人生の出発点になりました。

 宇都宮高等農林(現・宇都宮大学)を卒業後、一九四三年に農林省農事試験場に入り、兵役を経験。戦後、農林省に戻り、稲作農家の労力を減らす研究に取り組みました。地方の水田調査などをする中で社会の矛盾に気づき、農村を救うためにと日本共産党に入党。四九年に定員法で解雇された今井さんは「マッカーサーの命令で吉田茂(当時の首相)が私の首を切った。吉田の地元にいって農村から意識を変えよう」と高知県にいき、共産党の常任として農村オルグに。

 一九五六年に共産党の常任を退き、農民運動を開始し、高知県農民連盟の専従書記として活躍しました。その後、高知県農業会議職員となり、八五年に六十歳で退職しました。

 本書には、生い立ちをはじめ、アメリカやニュージーランド、ドイツなどの農業視察の報告もおさめられています。「さまざまな困難に直面している日本の農業と農村を考える上で、…大きな示唆を与えてくれる」と元農水省農業技術研究所長の江川友治さんは「発刊に寄せて」で推薦しています。ぜひ一読を。

(高知新聞企業 税込みで一冊千五百円)

(新聞「農民」2001.9.17付)
ライン

2001年9月

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