安い農産物の向こう側タイの農村はいま山本 博史
内陸部のエビ養殖解禁かブラックタイガーを中心とするタイのエビ輸出は、米・ゴム・水産缶詰に次ぐ主要輸出品となっており、外貨獲得に貢献しています。海岸を汚染してしまったエビ養殖が内陸部の稲作地帯に広がり、周辺の水田に塩害をひきおこしたため、中部平原の八県で、全面禁止が行われたのは九八年でした。ところが最近、政府内部から、その解禁を求める声が高まっています。 七月末にピタック副首相が閣議の席上で、「この禁止はエビの輸出減少、外貨収入の減少につながり、タイ経済にマイナスをもたらしている」と解禁を要請、内閣としても禁止措置の撤廃を協議することになりました。内陸部のエビ養殖を復活させることによって、主要市場である日米への輸出量を二倍に拡大できるとされています。 もちろん、多くの稲作農民は塩害の悪影響を指摘して強く反対し、研究者やNGOグループも「目先の利益を優先して安易な決定をすべきでない」と反対の動きを強めています。 この問題を検討するために八月半ばに開かれた国家環境委員会も賛否両論が対立して結論を出せず、小委員会を設けて環境調査を実施し、四十五日後に結論を出すことになりました。 カセサート大学のチャロート講師によれば、違法なエビ養殖は現在でも、内陸の各県で五二〇〇ヘクタールに及んでおり、周辺の水田を塩害から回復させるためには十年かけても困難とされています。 この中部平原内陸部でのブラックタイガー養殖解禁の中心的推進者は、日本向けエビ・ブロイラーの輸出や配合飼料供給で東南アジア最大のアグリビジネスとなったCPグループで、ピタック副首相は、このCPグループ会長の元秘書だったと報じられています。
(新聞「農民」2001.9.17付)
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[2001年9月]
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