「農民」記事データベース20010917-508-11

生まれて初めてひえとりを手伝いました

ひと夏の達成感を求めて

東京・正則高校生の農業体験 in 庄内

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 「山岳部に入っているんです。一週間前は奥穂高へ登ってきました」――小柄な体に大きなリュックを背負い、東京・正則高校の二年生、鈴木雄二郎君が農業体験のため、八月三日山形県庄内にやってきました。とにかく色々な農作業を体験してほしいと、農民センターの青年部員二人で受け入れることにしました。


 “初体験”でも笑顔にホッ

 最初に滞在した我が家では、二人の子どもが「お兄ちゃんが来た」と大喜び。「どうして農業体験してみたいと思ったの?」と質問すると「自然が好きなんです。だから山岳部にも入ったんです」。でも「これまで農作業したことはない」との答えに少し不安でした。

 体験初日、生協の直売コーナーで「いらっしゃい」「産直トウモロコシですよ」と声をあげ、茄でた「きぼう」を鈴木くんと私、生産者の荻原富美さんの三人で販売。途中、一人で応対してもらい、笑顔で「一袋売れました」と話す姿にホッとしました。

 最初は戸惑っていたトウモロコシの収穫作業も、実の茎を切り揃えて作業場へ運び、選別、箱入れ作業と、覚えれば手際よくこなしてくれました。一日の作業を終え「どうだった?」と声をかけると「はい。初めての事ばかりだから」とさすがに疲れた様子。

 二日目は田んぼの「ヒエとり」。慣れない鎌を使いヒエを刈り取る作業は辛いようでしたが、仕事を終え「きれいになったね」と雑草がなくなった田を眺めながら二人で話しました。夜は鈴木くんから「農業を始めたきっかけは?」「一番嬉しいことは? 苦労したことは?」「農作業でお父さんから叱られたことは?」「これからどうしてゆきたいですか?」との質問攻めに、私の酔いもさめるほどでした。

 慣れない作業も一生懸命に

 三日目からは長谷川正喜さんの所で「菌床しいたけ」や「だだちゃ豆」「かた瓜」の収穫・出荷作業を手伝いました。だだちゃ豆の選別作業は、脱莱機械でサヤをはずし、ベルトコンベアーを流れる枝豆のうち一粒莱や、虫食い莱を取り除く作業です。「慣れない作業なのでちょっと疲れる」と鈴木くん。仕事する手を休め、長谷川正喜さんのお父さん(純一さん)は「朝六時から仕事を手伝ってもらった。一生懸命手伝ってくれて助かる」と目を細めていました。

 「山登りの魅力は、頂上まで行った時の達成感です」と語る鈴木くん。まぶしい夏の日差しのもと農作業をする姿に「自然大好き青年が、ひと夏の達成感を求めている。そして、農業体験を通じて、農と食の守り手がまた一人増えた」――そんな気がしました。

(庄内農民センター 菅井巌)


高校生から届いたお礼の手紙

この夏一番の体験

正則高校二年鈴木雄二郎

 先日は、お世話になりました。わずか、七日間でしたが、その一日一日が充実し、良い経験になりました。

 農業体験は、自分にとって、ものすごく意味があったと思います。産直センターでの仕事や稲のヒエ取り、トウモロコシの収穫、だだちゃ豆の収穫など、たくさんの体験をさせてもらいました。

 そして、産直センターから送っていただいた、トウモロコシやだだちゃ豆、ありがとうございました。僕の家族のみんなは「おいしい」と言って食べています。近所の方や、おじいちゃん、おばあちゃんにも「おいしい」と言って食べてもらいました。

 今回の夏で最も色々な経験をさせていただいた、この農業体験を決して忘れず、また、ご恩も忘れません。ご家族の皆さんにヨロシクお伝え下さい。本当にありがとうございました。

(新聞「農民」2001.9.17付)
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2001年9月

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