農家260万戸バッサリ切り捨て農水省の「構造改革のための経営政策」
農水省は八月三十日、「農業構造改革推進のための経営政策」を決めました。これは、今ある三百七万戸の農家のうち、規模拡大と法人化を基準にして四十万戸程度を「育成すべき農業経営」として選別しようというもの。 「それ以外の農家」は、産業としての農業の担い手とみなさず、農政の対象からバッサリ切り捨てて、さらに「育成すべき経営」は輸入農産物との競争にさらし、生き残れない経営は「市場から退場してもらう」という、二段構えで家族経営を壊滅させるシナリオです。 「政策」は、「それ以外の農家」(二百六十万戸)を「地域の農業資源の維持管理に一定の役割を担うもの」(畦の草刈りボランティアか!)、「健康、生きがいのための農業」などと位置づけています。しかし輸入自由化や相次ぐ価格保障の廃止のもとで、兼業先の収入で農業経営の赤字を穴埋めし、地域農業を守ってきたのが大多数を占める兼業農家です。 こうした現実をまったく無視して武部農相は「副業的農家は稲経から除外しなければならない」と敵視し、「政策」は価格保障が零細経営を温存させてきたかのようにあべこべに描いています。 「育成すべき農業経営」の基本になるのは「認定農業者」だといいますが、農水省のいうとおりに規模拡大してきた「認定農業者」こそ、輸入急増による価格暴落の打撃をもっとも受け、いま不良債権処理の対象にされています。 「政策」は一応、「セーフティネット」を検討してみせていますが、その内容は農家が保険料を支払い、収入の減少に備える「保険方式」を基本にするというもの。これが、三十分の一の賃金の中国農業や経営規模百二十倍のアメリカ農業と競争する農家にとって(しかも減反が前提!)、何の役にも立たないことは明らかです。 「保険」制度はアメリカでも導入されていますが、これは価格保障を土台にしたもの。価格保障を全廃して「保険で自分の身は自分で守れ」というのは、日本ぐらいです。 家族経営を壊滅させた後で、政府・農水省がねらっているのが「株式会社の農業への参入」。武部農相は「五年後の農地法改正を視野に入れている」と語り、「政策」でもメリットを挙げて検討しています。大規模経営に幻想を与えながら、家族農業を壊滅させ、農業と農地を大企業のもうけの種にするこれが、「政策」に示された小泉「改革」農業版の危険な中身です。
(新聞「農民」2001.9.17付)
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[2001年9月]
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