「農民」記事データベース20010917-508-02

農に触れ学び生きる喜び

三上 満(東葛看護専門学校校長)


 いまの子どもたちの問題の一つに、子どもたちが「生産者的人格」から引き離されつつある、ということがあります。私が大好きな言葉に「まめまめしさ」という言葉があります。まめまめしく体を動かして、環境に適応したり、克服したりしながら、自然のなかで対象に働きかける。そしてそのなかにあるさまざまな喜びや不快、こういう人間的な生きる振幅の広さが子どもたちの生きる喜びにつながっていくんだと実感しています。これを「人間力」と言ってよいと思うんです。人間らしく生きる根底的な喜びを、体に刻んでいく、こういうことを私たちは「まめまめしさ」という言葉でいっているわけです。

 そのことを考えていくと、あらためて農業のもつ教育力の大きさを思うのです。給食に出た食材について子どもたちが調べる。年間を通じて稲作を体験してみる。このようにさまざまに農業に触れながら学ぶことで、子どもたちの学習はいっそうリアルなものになっていくと思います。日本の農業を守り、その農業の力がまた、子どもたちの人格を生産者的に陶冶(とうや)していく、その力に確信をもってみんなで頑張っていきたいと思います。

 二十一世紀という世紀は、人類の歴史上、最もすばらしい百年間になるだろうと私は思います。二十世紀はあれだけの巨大な前進平和、独立、人権、国民主権、自由、民主などをしたわけですから。つまり過去の歴史は、支配階級と被支配階級の階級闘争でしたが、そういう歴史に終止符を打つ、歴史的な世紀ですね。そのくらいの大きなロマンを共有していかなければと思うんです。物を作る、大地と生きる、風に吹かれながら野に出て働く、こんなことが人間の存在の根底から失われていくなんてことはありえないです。そういう意味で、農民連のみなさんこそ、これから最も輝いていく人たちだと思っています。

 かつて、一九三〇年の大不況の中での大豊作の年、宮澤賢治はあれほど願った豊作がかえって農民を苦しめるのを見て、その夢が打ち砕かれたのだと思うんです。物を作れば作った者が報われるという社会や、地域や人々とのつながりを開拓して、いまの家族経営でやっていける農業を探究する、そういうみなさんの努力を、私たちも力いっぱい応援していきたいと思うし、「農民連ガンバレ」と言いたいと思います。

(新聞「農民」2001.9.17付)
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2001年9月

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