「農民」記事データベース20010910-507-02

農協の不良債権処理問題

農林中金が単位農協を「JAバンク」から排除することも


「系統サービサー」が業務開始

取り立て強化は必至

 来年四月に迫った金融機関のペイオフ(預貯金の払い戻しを一定額までとする措置)解禁にそなえて、いま各金融機関は、不良債権処理を急いでいます。近年になって「JAバンク」を自称しはじめた農協でも、昨年秋の全国大会や、六月に成立した「農協改革二法」をふまえて、「経営破たんを未然に防ぎ、JAバンクの信頼性を高める」ことをねらいとした不良債権処理対策が進められています。

 「農協改革二法」は、「新農基法制定とぺイオフ解禁など金融情勢の激変をふまえ、農協改革の自主努力を支援するための法制度改革」(法案趣旨)と位置づけられていますが、小規模農協にも常勤役員三名以上を義務づけて自立的経営を脅かすなど、中央会と農林中金への中央集権化によって組合員自治を後退させるという特徴をもっています。

 農協法・農林中金法の「改正」とともに、これまでの「農林中金・信連統合法」を改称して、「信用事業再編強化法」が制定されました。この法律は、農林中金が制定した「自主ルール」を基準にして問題のある農協を「JAバンク」から排除(除名)することまで定めています。

 農協から不良債権を買い取って、農協に代わって借り手からの資金回収を行う「系統債権管理回収機構株式会社」(系統サービサー)も、農林中金・全農・全中・共済連・全漁連からの出資で四月に発足、八月一日から業務を開始しています。これと同様の債権回収会社は、これまでも各県段階では設置されていたところがありましたが、「系統サービサー」は全国段階で直接全組織を対象に業務を行うことになりました。このサービサーが農協から買い取る価格は、簿価を大幅に下回る場合がほとんどで、例えば担保の土地がいまどの程度で処分できるかなどを考慮して判断されます。

 農協の抱える「不良債権」には、不動産業者など組合員以外への貸し付けも少なくありませんが、主流は農家である組合員への貸し付けです。農林中金は、畜産負債などの農業融資は「農業政策の中で解決する問題」として、離農している場合などを除き、「積極的には取り扱わない方針」(「日本農業新聞」五月四日付)としていますが、農家への回収圧力が強まることは当然です。しかも農林中金は、農協の最低自己資本比率をこれまでの四%から八%(国際金融を行う一般銀行なみ)までハードルを高めようとしており、これまで以上に「リスク管理債権」解消への拍車がかけられることになります。サービサー法では、債権者に対して罰則つきの立入調査権も認めており、強烈な取立圧力になると考えられます。農協の農家に対する「不良債権」は、歴代「不良政権」の遺産ともいえます。強力な不良債権処理のための仕組みづくりが、「JAバンク」からの単位農協の排除とともに、農民の農協からの排除に発展することも十分考えられます。これは大多数の農家を農業政策の対象から除外しようとする新しい農業経営政策と表裏一体の関係と見ることができます。

(山本 博史)

(新聞「農民」2001.9.10付)
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2001年9月

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