安い農産物の向こう側タイの農村はいま山本 博史
トウモロコシから鶏へ一九六〇年代から七〇年代にかけて、タイは世界有数のトウモロコシ輸出国でした。ベトナム戦争を背景にした入植政策と高速道路の整備と、日本における畜産振興が拡大要因となりました。タイのトウモロコシは、鶏卵の黄身を濃くするため養鶏農家から歓迎されていました。ピーク時の七二年には、九十五万トンに達し、日本にとってタイはアメリカにつぐ輸入先となりました。それが八〇年には、年間輸入量が三千トンに急減します。 最大の原因は、タイ産トウモロコシから発ガン性カビ毒「アフラトキシン」が検出されたことです。収穫後に地べたで一次乾燥するさいに付着、輸送中に増殖することがわかりました。 それ以降、日本向けのトウモロコシ輸出はゼロに近い数量となります。 しかし一方で、この時期から年々ウナギ登りで急増した対日輸出農産物があります。エビとともに拡大した鶏肉です。安い労賃を最大限に利用して、骨ぬきをし、竹串にさして冷凍・輸出されました。最高時の九二年には、骨ぬき鶏肉が十三万五千トン輸出され、日本の輸入鶏肉の五一%を占めるまでになりました。 こうして養鶏が拡大したタイは、近年トウモロコシ輸入国に転換しています。 しかし、いまも多くの鶏は、タイ産トウモロコシを主原料とした配合飼料で育てられているのです。
(新聞「農民」2001.8.20・27付)
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[2001年8月]
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