「先が見えないのがつらい」レタスの価格暴落/長野からのレポート6月までの輸入量が昨年1年分を超過
高原野菜の本場、信州南佐久郡川上村。「この村で三十度を超す気温がこんなに続くなんて経験したことがない」。農民連会員の由井幸憲さん(73)はこう話してくれました。そのうえ七月末から八月にかけて雨が降らず、干ばつの心配もあります。村では今、特産のレタスの採り入れと秋レタスの植え付けに余念がありません。標高一三〇〇メートルの高原のはるか彼方まで波打つ白いビニールマルチのレタス畑ではタンクに入れた水を散水する光景が。 JA長野八ヶ岳川上支所の新海忠尚支所長は「雨がないのでレタスの玉が小さいが病気はない。ただ高温で発育が進み抽苔(ちゅうたい=玉の中で芽を出す現象)を起こし、農家は間引きするなどで苦労しているが、どういうわけか値が上がらず、先の展望が見えないのがつらい」とため息をつきます。 今年の春から市場がおかしかったそうです。「レタスのL一ケース千円以下はないというのが常識だったのに、六月二十五日頃から安値がはじまり、七百円台が出てきた。それで二日ばかり五〇%廃棄したので、若干上がったが、売り上げは九一%程度。そして異常高温だ。農家は作って出荷するだけ。考えている暇もない。世界の情勢や市場、消費者の皆さんの動向が知りたい」と話していました。 村のところどころに、畑にならなかった小高い丘を削った場所があります。連作障害を防ぐため、畑に客土するための土を採った跡です。どこの畑にも大型トラクターとともに、夜明け前の二時三時から畑に出て収穫をするための投光器が置いてあります。 一うねごとに敷かれたビニールマルチは遠くからは一枚に見え、真夏の太陽に照り映え、いったいどれだけ多くの農民の労働と資本がつぎ込まれているのか考えてしまいます。 一方では「働く女性や単身世帯が増え、家庭での調理が減って…生鮮野菜の摂取量が一九八五年から十五年たった二〇〇〇年で五・五%減少し、家庭消費の減少分は外食にシフト」。野菜サラダの販売数量を毎年一割以上伸ばしている総菜大手のロック・フィールドは「契約農家に価格引き下げを要請している」(以上日経八月八日付)。 国民の三食は俺たちにまかせろとばかり安い輸入食料を使って低価格で競争し、それをテコに国内農家には低価格出荷を押しつける外食産業と開発商社。 別表を見てください。昨年一年分のレタスの輸入量を今年は半年で抜く勢いです。断然多いのはアメリカです。特に今年六月の輸入量 は全体で前年比四倍。これでは、価格を上げるためにいくら「廃棄」しても安値が続くのは当然でしょう。
川上村から下に降りると佐久平に広がる青々とした水田はもう穂が出ています。政府と全農は豊作だからとその稲を青刈りさせます。レタスも廃棄、稲も青刈り。なんで輸入を規制しないのか、怒りが込み上げ、セーフガード発動の運動を広げなければの思いを強くしました。
(冨沢)
(新聞「農民」2001.8.20・27付)
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[2001年8月]
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