地球温暖化防止問題農業も高温・豪雨・干ばつの影響大 政府は「京都議定書」の早期批准を
世界の、日本の気候が変化している。昨年の東海豪雨のような今まで見られなかった異常気象で日本も大きな被害を受けた。冬に氷が張らなくなった湖、積雪がなくなった山、生息地が北に移動する昆虫や珊瑚、実をつけにくくなった樹木など、温暖化の兆候は日本でもあちこちで見ることができる。
急速な気温上昇 気候の極端化へ世界の科学者の集まるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後百年間に平均気温が最大で五・八度上がると警告した。九三年に日本に大凶作をもたらした冷夏、九四年の猛暑――これらはいずれも平年と一度しか違わないのを見れば、最高で五・八度の平均気温上昇がいかに大きなものかがわかる。 気温上昇だけではない。気候変動が心配されている。東海豪雨のような異常気象、とりわけ豪雨・洪水と干ばつが単に多発するだけでなく、同じ場所を豪雨と干ばつが交互に襲ったり、隣り合わせの地域を豪雨と干ばつが同時に襲うなどの極端な気候が待っていると言われている。 急速な気温上昇と、気候の極端化で、生態系は極めて大きな影響を受けると見られる。二度の気温上昇は等温線が百五十〜五百五十キロメートルも北へ移動することを意味する。数十年でこれだけの移動ができる樹木はほとんどない。農業も、台風・豪雨や干ばつの影響を受けたり、高温で作付けできない作物が拡大すると見られている。
温室効果ガスの排出量削減をこうした温暖化・気候変動の防止のためには、上昇する大気中濃度を低い水準に留めなければならない。このためには大幅な排出削減が必要だ。仮にCO2以外の温室効果ガスも考慮して産業革命前の二倍の濃度に留めるには、五十〜百年後に全世界の温室効果ガス排出量を三分の一にしなければならない。一九九七年に合意された京都議定書は、二〇〇八〜一二年に先進国に一九九〇年比平均五%削減を求めている。しかし、議定書の抜け穴を拡大したい日米など一部の国の抵抗で、九八年以降も運用で合意できずに議論が続けられていた。 日本政府が求めてきたのは(1)「森林管理」など、植林以外の定義も計測も曖昧な手法を拡大すること、(2)ロシアの経済不振で余った排出枠の購入を無制限に認め、ODA(政府開発援助)や原発輸出も削減と認めること、(3)目標を守れなかった国への罰則をなくすか緩めること、(4)途上国支援の大幅減額――など、世界で温暖化対策強化に逆行するものばかりである。
米国が一方的に議定書から撤退次いで、この三月にはブッシュ政権が、米国経済の利益にならないとして一方的に京都議定書から撤退した。正副大統領が石油資本出身の米国は当面、議定書に復帰する見込みがない。米国抜きで議定書を発効させて対策を一日も早く進めるべきか、米政権の心変わりを何もしないで待つべきか、世界の意見は分かれている。欧州や大半の開発途上国は前者である。日本政府は、国会が早期批准を求めた決議を採択し、百以上の地方議会も決議しているにも関わらず、米国の参加が重要だと称し、未だに批准の方針を明らかにしていない。 京都議定書は、発効のため、五十五カ国の批准、批准した先進国の一九九〇年のCO2排出量が先進国全体の五五%を占めること、の二つの要件を定めている。米豪合わせて三八・二%を占め、八・五%の日本が同調すると、発効を妨害できる。逆に日本が批准すれば議定書は発効する。日本の態度が注目されているのはこのためである。
日本政府は米国追随で消極的小泉首相はボン会議では合意できないと発言し、世界を激怒させた。ボン会議では、日本を含む世界が米国抜きの発効に向けてかろうじて合意した。しかし、合意内容は、日加豪などの消極的な国が強硬に抜け穴拡大を求めたため、実効性のない森林管理(植林ではなく、樹木が自然に成長する分を人為的努力とみなす考え方)で先進国平均五%削減の半分を賄うなど、抜け穴を拡大して終わった。 京都議定書の議長国としての責任があるはずの日本は、二十一日に日本政府に大幅に譲歩した議長案が出てからも最後まで抵抗、一時は昨秋に続き日本がまた会議を崩壊させると危倶された。日本は地球環境保全への抵抗勢力として定着、環境NGOからの不名誉な「化石賞」の常連となった。 日本政府がこんなに消極的なのは、アメリカ追随の姿勢とともに、国内で削減できないと思いこんでいるためである。しかし、工場や建物、自動車・電気機器の省エネを強化したり、自然エネルギー起源の電力の買取義務、代替フロンの規制などの制度を整備すれば六%以上の削減が国内だけで可能である。しかも燃料コストが削減できて、産業も国民もかえって得になると環境NGOは訴えている。
(公害・地球環境問題懇談会政策委員会) ※見出しは、編集部でつけました。
(新聞「農民」2001.8.6付)
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[2001年8月]
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