「農民」記事データベース20010806-504-01

農民が多数の非同盟諸国

世界の政治・経済に影響を与える非同盟運動

日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会理事長 秋庭稔男さんに聞く

 日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会の秋庭稔男理事長や農民連の佐々木健三会長ら三十六氏がよびかけ人になって、「非同盟運動と、この運動の発展を考える国際シンポジウム」が9月15〜16日に開かれます。

 今年は非同盟運動発足40周年。非同盟運動は「平和、正義、平等、民主主義ならびに国連憲章と国際法の完全な尊重にもとづく、新しい国際関係体制の樹立」をめざし、核兵器廃絶、IMF、WTOなど国際金融・貿易機関の民主化など、国際政治・経済に現実に影響を与えています。

 非同盟運動とは何か? 国際シンポジウムの成功はどんな展望を切り開くのか?――秋庭稔男さんにお聞きしました。


 WTOに関する国際シンポジウムに参加して

 昨年二月の「WTOに関する国際シンポジウム」は、経済の「グローバル化」、WTOのもとで、世界中の農民が多国籍企業による収奪に苦しめられていることと同時に、ともにたたかっている友人がいることを発見し、力強い国際連帯の重要性を肌で、感情的にも知ることができたという点で、たいへん大きな成功だったと思います。

 食健連、農民連が中心になって国際シンポジウムを成功させたということは、この組織がアメリカの覇権主義、経済の「グローバル化」に反対するたたかいの国際連帯を推進し、国際的な貢献を果たす力量をもつ組織であることを内外に明らかにしたという点で、たいへん画期的なことだったと思うんです。

 私たち連帯委員会も、いささかでも役に立てればということで食健連に参加させていただき、今後とも一緒に活動したいと思っています。

 世界を変革するエネルギー 非同盟運動の実像

 とくに農民連の皆さんの関心が強いのはWTOだと思いますが、アメリカの多国籍企業の利益を最優先する機構としてのWTOをはじめとするアメリカの覇権主義に対する一大抵抗勢力として、非同盟諸国が存在し、活発に活動しています。

 私も、非同盟首脳会議に参加していろんなことを知りましたので、そのときの感想をまじえて、非同盟運動がどういうものかについてお話したいと思います。

 核兵器廃絶と飢餓・貧困の解消

 私が初めて参加した第十一回非同盟首脳会議は、九五年十月にコロンビアのカルタヘナで開かれました。

 まず驚いたのは、ほとんどの首脳が核兵器廃絶を要求したことで、原水爆禁止世界大会に参加しているような感じを受けました。

 その次に、ほとんどの首脳が「飢餓・貧困の解消」を要求していました。

 飢餓と貧困の問題は、発展途上国にとってはたいへん重要な課題であり、経済の「グローバル化」、規制緩和、市場万能主義がいっそう飢餓と貧困を増大させ、非同盟運動の変革のエネルギーをさらに蓄積させる。ですから、この運動は弱まることはなく、いっそう強まると思います。

 国連と国際秩序 全体の民主化

 三番目に首脳たちが強調したのは、国際機関の民主化、国連の民主化です。核兵器廃絶も飢餓・貧困の解消も、経済の「グローバル化」反対も、いずれもアメリカの覇権主義に反対し、国際秩序全体を民主化していく課題です。

 国連は一九四五年秋に創立されましたが、この時は発展途上国は全部植民地のままでした。発展途上国が独立して国連に入ったわけだから、国連の運営や国際秩序を発展途上国の意見を聞いて民主化すべきだ――これは当たり前の要求で、絶対に退かないと強調しているんです。

 国際政治・経済に大きな役割を果たしている

 それでは、この非同盟運動が現実に世界の政治・経済にどういう影響を与えているのか。

 核廃絶が国連の流れに

 まず第一に、国連の場で核兵器廃絶の大きな流れを作り出したことです。

 二〇〇〇年の国連総会では、百四十五カ国の賛成で核兵器廃絶決議が採択されました(反対はインド、パキスタン、イスラエルの三カ国)。二年前の九八年の国連総会では賛成百十四、反対十八だったものが、二〇〇〇年は三カ国。しかもアメリカも日本もイギリスも核兵器廃絶に賛成せざるをえない状況に追い込まれました。

 どうしてこうなったのか――。同じ二〇〇〇年五月にNPT(核不拡散条約)再検討会議が開かれましたが、この場で、非同盟諸国と関係が深い七カ国(新アジェンダ諸国)が、「究極廃絶」論をきびしく批判して「目標は核兵器の完全廃絶である」という決議を出し、非同盟諸国と結束して奮闘しました。アメリカは再検討会議の決裂と孤立を恐れて、核兵器廃絶に賛成せざるをえないところに追い込まれました。

 経済の「グローバル化」に“待った”

 経済の問題では、九九年にシアトルで開かれたWTO閣僚会議が決裂しましたが、発展途上国は「WTOの大多数の加盟国は、閣僚宣言への同意を拒否する」という五十五カ国声明を出しました。NGOの運動とあわせて、発展途上国がこういう力を発揮した――これが閣僚会議を決裂させた決定的な力でした。

 もう一つの動きは、二〇〇〇年四月にキューバの首都ハバナで開かれた「G77」首脳会議です。「G77」(77力国グループ)は、南北交渉のなかで「南」の立場を体現する発展途上国中心の国家グループで、創立は一九六四年でしたが、二〇〇〇年に初めて首脳会議を開いた。しかも、この首脳会議に参加した百三十三力国は国連の中では最大会派で、非同盟首脳会議に参加している国(百十五カ国)よりも多いわけです。

 そして「公正さと平等性にもとづいた国際経済関係」「新しい人間的な世界秩序」を要求する宣言を採択し、沖縄サミットの時にG77議長国のナイジェリア大統領と非同盟議長国の南アフリカ大統領が、先進国に対し、重債務国の債務の削減を要求するという共同行動を初めてとりました。

 飢餓と貧困の克服のために、経済の「グローバル化」、アメリカの経済覇権主義に抵抗していく役割を現実に果たしているといっていいと思います。

 21世紀後半の重要な潮流 非同盟運動

 では、非同盟運動というのは何か。――

 旧植民地体制の崩壊がもたらした二十世紀後半の国際政治上のきわめて重要な潮流で、国家レベルの集団的運動です。独立、自主、平和な国際秩序をめざし、三年に一回、各国首脳が会議を開き、最終文書を採択するという運動です。

 私が第十一回首脳会議に参加したときに、モザンビークの政府代表団は、こう言っていました。「非同盟首脳会議の場がなければ、モザンビークがやりたいこと、考えていることを世界に訴えることも呼びかけることもできない。私たちは首脳会議に参加して、要求を最終文書に反映させ、それにもとづいて国連の場で集団的に行動し、願いを実現していく。そのために首脳会議はきわめて重要である」と。

 非同盟運動が発足したのは一九六一年で、目的として(1)民族自決の確立、(2)帝国主義・新旧植民地主義・人種差別・覇権主義反対、(3)諸国家の対等・平等、大国の干渉・介入反対、武力の行使や威嚇による圧迫反対、(4)大国主導下の軍事ブロックに反対、軍事同盟にもとづく軍事基地の撤去――などを掲げています。

 人類の圧倒的多数を占める非同盟諸国

 いま世界の人口は六十億です。非同盟運動加盟国とオブザーバー国の人口は四十六億で、七七%を占めて多数派です(このほかにゲスト国があります)。

 しかも、そのうちの圧倒的多数は農民です。たとえば、この前訪問したベトナムの人口八千万のうち八割は農民です。農民が圧倒的多数を占める国々が非同盟諸国ですから、これは農民連の皆さんにとっては、まさに頼りになる仲間が存在しているといえるのではないでしょうか。

 「非同盟国際シンポジウム」がめざしていること

 われわれが、こういう非同盟の勢力と連帯を強め、非同盟運動のいっそうの前進をはかっていくことは、世界を変革していくうえで非常に重要だと思います。

 日本の多くの人たちに、非同盟運動を知ってもらい、結びつきを強めることの大切さを知ってもらう――これが国際シンポジウムのねらいです。

 また、来年、第十三回首脳会議が開かれますが、その際に開催が準備されているNGO国際会議に、軍事基地撤去・軍事同盟解体やWTO協定の抜本的改定を含めていろいろな要求を反映させ、非同盟諸国首脳会議の最終文書に反映させていく。

 WTO協定の問題でいいますと、国内でのたたかい、人民同士・農民同士の国際連帯のたたかいに加えて、WTOに加盟している百四十カ国の八〇%が非同盟諸国と関係しているわけですから、これらの国々がWTOの横暴を許さないというたたかいを進めていくために、積極的に私たちNGOの要求を反映させていくこと、これも重要なたたかいの一つだと思います。

 国際シンポジウムを内容的にも規模的にも成功させることは、日本国民にとって大きい意義を持つのはもちろん、シンポジウムに参加する非同盟加盟・オブザーバー国の在日大使館の人々を通じ、それぞれの本国にも積極的な影響を与えることができると思います。

(新聞「農民」2001.8.6付)
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2001年8月

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