「農民」記事データベース20010625-498-12

本の紹介

橋本紘二写真集『中国黄土高原』

―砂漠化する大地と人びと―


 昨年秋、新聞「農民」に写真家・橋本紘二さんの作品「中国黄土高原」が掲載されました。みなさん、ご存知ですか。

 橋本さんが五年間かけて山西省大同の周辺を撮影した写真集「中国黄土高原・砂漠化する大地と人びと」がこのたび発行されました。

 「一目見て、こんなところで人間が暮らせるのだろうか、農業なんてできるのか、唖然とした」と橋本さんは黄土高原の第一印象を語っています。黄土高原は中国の内陸部に位置し、日本の一・四倍の面積に九千万人が暮らしている「農業生産地」。もともと縁豊かな土地でしたが、時代とともに砂漠化が進み、現在深刻な事態に直面しています。

 写真集は春・夏・秋・冬の四季に分けてまとめています。黄土高原は乾燥した大地が果てしなく続く不毛の地というイメージが強いのですが、ここにもささやかな季節の移り変わりがあり、大地に生きる人々のドラマがあることを教えてくれます。

 私は「夏」のページを開いた時、植物の生命力の強靭さに驚き、鳥肌が立ちました。それは、草花が狭い段々畑にまるで緑色の綿を敷き詰めたように芽吹いた写真。橋本さんはこれらの写真を「耕して天に至る見事な段々畑だが、これは貧しさの風景だ」と説明しています。幾重にも続く段々畑の美しさと比べ、山の天辺まで作物を栽培してもなお貧困にあえいでいる人びと。橋本さんはそのことを見逃しません。

 「冬」の中で、“はれ”の日を撮影した写真に出会った時、私は少し救われた気がしました。春節(旧正月)や結婚式。紅色や青などの原色で飾った衣装。農地で働く時とは違った華やいだ表情。トラックに乗って町の正月を見物にいく村人の活気のある賑わい。

 中国は緑化に向けて、政府も民間人も動き出しています。橋本さんは写真集の後記で次のように結んでいます。「黄土高原が緑化され、砂漠化が止まり、農民の暮らしが豊かになることを切に願って」

(村上)

▼A四判、二〇八頁(カラーとモノクロ)、定価六千円、東方出版発行▼橋本紘二さんの住所=千葉県船橋市本中山四-四-三-九一三

(新聞「農民」2001.6.25付)
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2001年6月

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