映画紹介「こころの湯」(中国)人の心をいやす物語
この映画の中国語原題は「洗操――SHOWER」。潤いある映像を通して、湯水が人の心をいやすことを伝えている。 物語の舞台は、北京の下町の大衆浴場「清水池」。銭湯を営む劉(リュウ)は知的障害をもつ次男と忙しいが充実した日々を送っている。ある日、家業の銭湯を嫌って家を離れ、今はビジネスマンとして働く長男が帰郷する。次男からのハガキに、父が横たわる絵が描かれていて病気ではないかと心配したのだ。久しぶりに会った親子の確執は根深い。しかし、父親が特別な思いを込めて銭湯を続け、問題を抱える常連客たちにさりげなく手を差し伸べる姿を見ているうちに、長男の心は少しずつ和らいでゆく。 北京は建設ラッシュで変貌著しい。高層ビル群の下で、この銭湯も含めた古い路地(胡同(フートン))が立ち退きを余儀なくされる。そうした事情を背景に物語が展開される。 作品の魅力は、何と言っても知る機会の少ない北京の銭湯のようすだ。リラックスした場所で過ごす中国人の感情が巧みに表現されていておもしろい。 物語の筋を追って観ている途中、突然乾燥した褐色の大地がスクリーンを覆った。雨がほとんど降らず、井戸は枯渇し困り果てる農民。村の家々を回って、どんぶり一杯の穀物を差し出し、どんぶり一杯の水と交換する場面が象徴的に映し出される。 集めた水は風呂に満たされる。それは昔ながらの風習で、明日婚礼する娘が身を清めるために使う水。 貴重な水にまつわるエピソードがこの物語と交差しながら描かれる。 中国は広い。水に対する思いもさまざまだ。簡単にひとくくりできないのが中国の大地なのかもしれない。 (村上)
監督は張揚。この作品は長編2作目で、1作目の「スパイシー・ラブスープ」は中国で大ヒットした。父親役で出演した朱旭は、日本ではNHKテレビ「大地の子」の父親役で知られている。 6月下旬、東京・日比谷シャンテシネマにてロードショーの予定。
(新聞「農民」2001.6.18付)
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[2001年6月]
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