「農民」記事データベース20010618-497-09

安い農産物の向こう側

タイの農村はいま

山本 博史


現代タイ版“徳政令”発動したが

 ことし一月六日に行われたタイの総選挙の結果、下院における半数の議席を確保したタクシン首相がひきいるタイ愛国党は、二年前に各政党から主要議員を引き抜いて結成されたものです。はでなイメージ選挙を展開しましたが、とりわけ経済不振で矛盾の吹きだまりになっている農村の貧困救済策が、多数の農民票獲得につながりました。

 その選挙公約は、(1)農民債務の三年間返済凍結、(2)一律三十バーツ(八十四円)の診療費、(3)各行政村への百万バーツ(二百八十万円)の村おこし資金提供、などが柱となっています。

 借入金の返済猶予については二百三十六万農家が対象とされ、四月から六月まで申込み受付が開始されました。一部では、借金を返さないことが当たり前とされる「モラルハザード(倫理障害)」も心配されましたが、申込みは政府見込みを大きく下まわっています。

 棚上げ期間中に新たな借入れが出来ないのがその主な理由で、多くの農家は、借入れなしには新しいシーズンの営農が始められない事情にあり、この計画に加わらない場合に適用される貸付金利の一律三%分カットの方に魅力を感じています。

 医療費を一回三十バーツに抑える政策も、六県で試験的に実施されましたが、ほとんどの農村には病院がなく、医者もおらず、医療費よりも高い往復バス賃を払って都市に出かけなければその恩恵も受けられないという、医師不足の実態や都市・農村の格差の大きさをあらためてうきぼりにしています。

(つづく)

(新聞「農民」2001.6.18付)
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2001年6月

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