自民党が土地改良区を私物化KSDの農業版
“党費を肩代わり”許せない茨城農民連が県と土改連に申し入れ土地改良事業は、農家の賦課金や減歩と国と地方自治体の補助金で施行される公共事業で、目的外支出は土地改良法で固く禁止しています。まして政党の党費や政治団体会費への支出などもってのほかです。ところが自民党は長年、この土地改良区を私物化してきたことが、国会で問題になりました。とりあげたのは笠井あきら議員(日本共産党)。栃木県の自民党が、党費と土地改良政治連盟の会費を土地改良区に肩代わりさせていたとして、調査を求められていた問題で、農水省は一九九六年から五年間に十八県で六千万円余と調査結果を発表しました。しかし、この調査はあくまで任意であり、実態はもっと深刻なのではないかと指摘する声もあります。
県土地改連役員室に自民党旗茨城県では過去五年間で、延べ三百二十改良区、千七百三十七万四千円の自民党費と、土地改良政治連盟の会費が延べ七改良区で二十六万八千円もの肩代わりで全国一です。(五月三十日農水省最終発表)茨城県農民連は五月二十四日、茨城県と県土地改良事業団体連合会へ(山口武平会長=略称・県土改連)に申し入れをしました。 段本幸男=自民党参議員候補のポスターがあちこちに貼ってある県土改連事務所。自民党旗が飾られた役員室で、応対した事務局長は「土改連は技術的なことしか指導していない。政治的なことは政治連盟がしているので…」と回答。 代表団が「では、政治連盟はどこにあり、事務局はいるのか」と聞くと「政治連盟は別棟になっていて、事務局長や職員がいるのかどうかもわからない」としどろもどろ。しかしそれはウソ。党費と会費の肩代わりを依頼した自民党県連会長、県土地改良政治連盟会長も、それを受けて執行した県土改連会長、いずれも山口武平氏なのです。 ある土地改良区理事長は、県土改連から「五年以前のことは言うな」と口封じされたと県農民連役員に証言しています。その一方で県土改連は県農民連に対し「各土地改良区の県への回答は知り得る立場にない」とし、五月二十五日、申入書を返送してきました。 県は、申し入れに対して三年に一回、各土地改良区の事務と経理の監査をしてきた。しかし党費肩代わりなどは「発見できなかった」と答えましたが、全国一の肩代わりを見逃していたのです。 県農民連は、県に対し、(1)肩代わりを依頼した時点からの全額を返還するよう自民党県連を指導すること(法律上の時効は十年)(2)原因を明確にし再発防止の実効ある措置をとること―などを文書で求めました。 申し入れ後の県庁内での記者会見では、次々に「今後どう運動を展開するのか」「全国的な運動にしていくのか」などの質問が続出、KSDの農業版と言われる自民党の土地改良区私物化問題追及での農民連の運動に、大きな関心が寄せられました。
土地改良後、石ゴロゴロ因泥(いんでい)和男さん(46)=県西産直センター米部会副部会長は呆れ顔です。利根川流域、茨城県総和町百九十ヘクタールの釈水(しゃくすい)の「県営二十一世紀型土地改良事業」は、農民の反対で白紙撤回したのに、組合員の同意もなく「低コスト型」に計画変更。このとき必要な「土地改良区生産組合」設立にあたり、因泥さんがそこの役員にさせられていたからです。この計画に疑問をもった県西農民センターの初見安男事務局長が、情報公開条例で総和町に要求した資料では、当初計画と比べて事業費が十六億円から三十二億円に増えていました。 区画整理は昨年終り、作付けが始まりましたが、客土した田をトラクターで耕すとロータリーに火花が散って丸い河原石や、大きなコンクリートのかたまりなど、建設残土らしきものが続々。県の職員にどこの土かと聞くと「ただなんだから石ごろぐらい仕方がない」と言う始末。 田植えの時期なのに、圧力が弱くて、パイプから水の出が少ないので、仕方なくポンプを買って揚水しましたが、改良区に聞くと、「予算の関係上、計画より小さいポンプにした」。 ブロックローテーションで石ころだらけや、まわりを四〇センチも掘って水を抜いた田に小麦、大豆、ソルガムなどを植えていますが、捨て作りのものも。 土地改良は、できあがると農作業ができなくなる農民が出ます。認定農家に作業を委託するからです。 「作業効率化、大型農家育成とかいって、小さい田畑をでかい田畑にするのは、あとで企業が農地を取得する手間をはぶくための耕地整理だよ。農民のためなんかじゃない。作業を受託する認定農家もたいへんだ。米も野菜も輸入制限して価格暴落を押さえなきゃ」と、米とキュウリの専業農家の因泥さんは話しています。 自民党はこのような農民の苦しみをよそに、土地改良区を私物化し、参院選自民党候補の名簿順位を争う道具にしているのです。
「土地改良」問題埼玉農民連が県に申し入れ「自民党費の立て替えなどあってはならないこと。いろいろご心配をかけたが、『党費』の返還命令など、県農林部の指導も受け、再発防止につとめる」。これは、土地改良事業の組合費が自民党費に流用されていた問題で五月二十四日、埼玉農民連の高橋副会長、松本事務局長らの申し入れに対し、埼玉県土地改良事業団体連合会大野貞二常務理事が回答したもの。 申し入れには日本共産党の柳下玲子県議も同席し、埼玉県での土地改良事業のあり方などについても懇談しました。 (埼玉・松本慎一)
(新聞「農民」2001.6.18付)
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[2001年6月]
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