「農民」記事データベース20010611-496-11

演劇

個性派俳優殿山泰司の世界を舞台化

ひとり芝居 麦人独談「タイチャン」


 殿山泰司という俳優を知っていますか? 戦後の間もない頃から活躍、個性派俳優として貴重な存在でした。なかでも印象深く残っているのは、新藤兼人監督の映画「裸の島」です。乙羽信子と夫婦役でした。汗にまみれて黙々と働く農民の姿がいまだに忘れられません。

 その殿山泰司の著書のなかに『三文役者あなきい伝』があります。麦人(むぎひと)独談「タイチャン」は、このエッセーをひとり語りでみせる舞台です。麦人は劇団民芸やマスコミプロダクションに所属したあと、ひとり芝居の世界へ移りました。舞台では草野心平の小説を構成した独演「ごびらっふの死」を一九八六年に初演、九九年には自作・自演のひとり舞台「リュックサック」を上演しています。

 今回の「タイチャン」について、「殿山さんの生きてきた時代と、その時代の見方に引きこまれました。権力をもたない人間の目線というか、弱者の立場にたった人生哲学への共感があった。自分にもある三分の役者《で語ろうと思う」と麦人さん。

 舞台には殿山さんのトレードマークだったサングラスをかけて登場。どっかとあぐらをかき、ウイスキー片手に「やー、どうもどうも…」と始まります。原作の持ち味をいかした語り口調です。関東大震災や子どもの頃の風景や人情味、戦争で兵隊に召集され、やがて敗戦。「戦争なんか、しなけりゃよかったんじゃ」。表現と表情の豊かさが、物語の世界をいっそう深いものにしています。

(鈴木太郎)

 公演は毎月第4月曜日(来年4月まで、午後7時15分開演)、東京・日暮里・和音(わおん)。連絡先=独歩・電話042(343)0933

(新聞「農民」2001.6.11付)
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2001年6月

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