「農民」記事データベース20010514-492-13

農業を大切にする人々の国

かけ足で見たトルコ−下−

東京都 為我井雅子(大豆トラストメンバー)


 トルコ一の働き者は女性

 トルコ旅行中、一日に何回となく、バスを降りるたびに、チャイ(紅茶)を飲みました。このチャイは黒海沿岸部で栽培されています。トルコの北部は、西端部を除いては、黒海山脈といわれるシュマリ・アナドル山脈が、海岸近くまで追ってきて平野がほとんどないところ。黒海から湿った風が吹いてきて、その山々にぶつかるので一年中、雨が降ります。そのため紅茶の栽培に適しているそうです。

 日本でも「夏も近づく八十八夜」と歌われ、茶摘み歌を歌いながら葉を摘む。こちらも同じ。葉を摘むのは、どちらも女性。この地方の女性はトルコ一の働き者と定評があるといいます。

 カッパドキアの後は、イスタンブールへ移動。ボスポラス海峡をはさんで、アジアとヨーロッパ大陸にまたがる最大の都市イスタンブール。金角港に浮かぶ船と宿のブーレには、ゆうゆうと群れ飛ぶカモメ。路地には自己主張し、堂々と暮らす野良猫たち。

 現地ガイドのフラットさんが、「ぼくの国トルコは貧乏だけど、貧しくないよ」と旅の初めにおっしゃた言葉の意味が、旅の終着地点で理解できました。

 ボスポラス海峡クルーズの後は、魚市場に立ち寄りました。店には、サバ、イワシ、イカ、タコ、カレイ、サメなど、日本でもおなじみの魚も並んでいました。面白かったのは、このお店の魚が新鮮だという証拠に「エラ」をひっくり返してエラの赤い色を見せて売っていたことです。こんな魚の売り方は、初めてでした。

 イスタンブールの人は陽気で外交的と聞いてはいましたが、私が魚を興味深げにながめて回っていると、魚屋さんの若い人が、どでかいカレイを持って近づいてきて、「どう、このカレイすごいでしょう!」といって、魚と一緒に写真を撮ろうと誘いかけてきました。「ステキ!」と私は、すっかりご機嫌で、すぐ夫がシャッターを切りました。

 親日的なトルコ人

 昼食には、イスタンブールで獲れたというサバの焼いたものが出ました。サバにかけるソースがとてもさっぱりしておいしかったので作り方を聞きに行くと、マスターがにこにこして出てきて、ていねいに教えてくれました。「エズメ」という魚料理にいいソースでした。赤パプリカ、オニオン、トマト、トマトソース、ケチャップ、ガーリックなどを細かくきざんだ中にレモン汁とオリーブ油を入れて練ると出来るといいます。

 トルコの人はなかなか親日的で、日本語を話せる人が多くて驚きました。このトラキア地方は、ゆるやかな丘陵地帯で、ここも良質な小麦の生産地。海岸部は、夏ヒマワリが栽培され、油をとります。オリーブの木の実からオリーブ油もとります。

 トルコの旅では、野菜サラダが毎食出ますが、野菜にはオリーブ油とレモンのしぼり汁をかけるだけで、とてもさっぱりしておいしい。自分で作るドレッシングなのです。

 旅の最後にガイドのフラットさんが庶民生活を見てもらいたいと、スーパーに連れて行ってくれました。オリーブ油にもいろいろ加工品があり、イタリアなどにも輸出し、イタリアでさらに加工され、売られているといいます。日本も、タバコの葉やナッツ類を大量にトルコから輸入しているそうで、トルコと日本は、いろいろなつながりがあることを知りました。

 なにより感心したのは、食料自給率が高いこと。自立した主権国家としての幹がしっかりあるということ、そしてトルコの人々が農業を大切にしていることを知りました。

 自国の農業を守り、育て、誇りを持ってものを作れる国にするための運動をますます活発にし、食料自給率向上の世論をつくっていきたいと痛感させられた旅でした。

(新聞「農民」2001.5.14付)
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2001年5月

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