農業を大切にする人々の国かけ足で見たトルコ東京都 為我井雅子(大豆トラストメンバー)
三月中旬、「魅惑のトルコ周遊の旅」というツアーに参加しました。細かいところまでよく見てこれませんでしたが、新しい発見がいっぱいあり、楽しい旅でした。
日本より高い穀物自給率食いしん坊の私ですが、トルコで一番おいしかったのは、なんと「パン」。香ばしく、ほどよく固く、噛むとなんともうれしい味。どうしてかなあと考えてみたら、トルコは中東第一の農業国で、穀物自給率がなんと九四%もあり、日本の二六%とは大違いです。日本だって秋の収穫期の新米の炊きたてのごはんは最高ですが、トルコは、良質の小麦の生産地で、採りたてをパンにするからか、すごくおいしかった。野菜も、キュウリ、ナス、トマト、ニンジン、ピーマンなど日本でもおなじみのものが沢山あります。キュウリは、日本より大ぶりなのを皮をむいて一センチ位の輪切りにしただけなのに、甘味があってみずみずしい。 お米はピラフという形で、料理の副菜としてたびたび登場しました。ピラフは、ピーマン、トマト、ムール貝、ブドウの葉などに詰めたり、くるんだりして蒸したものを食べました。
夏は暑く冬は寒い旅のふりだしは首都アンカラでした。アンカラを含む小アジア内陸部は、北と東と南を山脈群にさえぎられたアナトリア高原なので、夏は酷暑、冬は逆にすごい寒さだといいます。私が訪れた時、「さくらんぼの花が咲いている」といわれましたが、トルコではサクラは花を見るのではなく、サクランボを食べるためにあることを知りました。ちょうど花盛りできれいな眺めでした。気候も日本と同じくらいで、気持ちのよい青空が見られ、長袖ブラウスとスラックスで過ごせました。ただし乾燥しているので、水分補給をまめにしました。 アンカラから約千キロ南にある「塩の湖」トゥズ湖は、日本の琵琶湖の三倍の大きさです。この湖は、夏は水が完全になくなり、塩の大平原になり、歩いて渡ることができるそうです。 夏は、日中四十度を超えるほど気温が上昇し、朝晩は五度位にまで下がるという大陸性気候。冬は雨期、夏は乾期、盛夏には平地の草の大半が強い太陽熱で枯れるといいます。そんな過酷な条件の中でも、穀物や農作物を作り、羊やヤギを飼い生計を営んでいる農民たちがいます。 バスから見る風景は、いけどもいけども広大な大地と岩山、そして地平線のかなたまで広がる麦畑。今年は山に雪が少なかったので、いつもの豊作は期待できないとの話でした。 東部アナトリア地方は、平均高度が海抜二千メートルを超える山岳地帯。「ノアの箱舟」が着いた場所と伝えられるアララト山(五千百二十二メートル)をはじめ、高山地帯が旧ソ連、イラン、イラクとの国境と接しているところ。牧畜業が主流で、羊、ヤギの放牧が中心。
強いものが遊牧 弱いものが耕すトルコの古い諺に「強いものが遊牧し、弱いものが耕す」というのがあるそうです。ガイドさんの話でも草や水を求めての移動生活はとても厳しいので、年々遊牧民の数は少なくなっていると言います。しかし、この諺は、遊牧民のプライドをしっかりと示していると、私は思いました。日本の農民のことを思うと、農民のプライドを傷つけている今の農政への怒りがフツフツとしてきました。このあたりの奇岩で有名な「カッパドキア」は、岩をくり抜いて作られた教会や地下都市、そして「妖精の煙突」(バリバリジャ)といわれる大きなキノコがニョキニョキはえたような奇岩がいっぱい。谷間や台地では、今も侵食が進行中。崩れていく岩塊もあれば、新たに妖精の煙突になりつつある奇岩も見えました。 岩肌には無数の穴が見えましたが、なんと「ハト」が巣にしているといいます。ハトは数えられないほど沢山います。ハトのフンは集められ、ブドウ畑の肥料に利用されているといいます。このブドウで、おいしいワインが作られ、名産品となっています。私も「カッパドキアの」おみやげにと、ワインを一本買いました。 (つづく)
(新聞「農民」2001.4.30・5.7付)
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[2001年5月]
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