畜全協乳価上げ酪農経営守れ二大乳業メーカーに緊急要請
「一キロ七十円。今の乳価は二十六年前と同じ、これでは日本から酪農がなくなる」――畜産農民全国協議会は三月二十一日、都内の大手乳業メーカー、明治乳業と雪印乳業の本社を訪れ「乳価を引き上げ、酪農・農業を守るための緊急要請」を行いました。要請では北海道、福島、茨城、岡山の酪農家が直接実態を訴えました。 北海道で酪農を営む下元定信さん(46)は「今の乳価では、規模拡大どころか機械の更新すらできない。再生産が可能で、希望の持てる乳価にしてほしい」と発言。参加者は「酪農民への借金がかさみ、施設だけでなく牛を担保にする農協もある。生産意欲が低下し、子どもに継がせたくないと離農する酪農民が急増している。このままでは将来の牛乳生産が立ちゆかなくなる。乳業メーカーにはその危機感があるのか」と強く要請しました。 明治乳業は「酪農民の経営が厳しいことは知っているが牛乳は赤字。十円下げなければ合わないが、それでも買っている」などと回答。会社は利益を伸ばしているにもかかわらず「赤字」を強調しました。 参加者は「消費者は、安全でおいしい国産牛乳を求めており、飲用乳の消費は伸びている。生産が不足状態なのに値下げはおかしい。生産意欲を回復するため、少しでも価格を上げたらどうか。経営が厳しいと言うのなら、不足払い制度の復活を業界として政府に求めるべきだ」と要請しました。 また、量販店による牛乳の買いたたきも指摘。「私たちは一キロ百二十円でないと再生産できない。大手量販店などでは、原価を割るような安い値段で販売している。適正な値段で販売するよう業界として取り組むべきだ」と要請しました。 雪印乳業は「中毒事件以降、経営が大変。早く利益を確保できるようがんばっている」との回答に終始。岡山県から参加した坪井貞夫さんが「食中毒事件で大阪工場の牛乳受け入れが停止し、他の乳業メーカーに供給した昨年は、生産者の所得が若干増えた。これまで生産者から買いたたいていたのではないか」と指摘しましたが、「他の工場への振替で新たにかかった運送費はこちらで負担した」などとはぐらかしました。 参加者は、翌二十二日、農水省に対しても「乳価や畜産物価格を引き上げ、酪農・畜産農業を守るための」緊急要請を行いました。
“安全・新鮮・本物を”牛乳産直懇談会開く「安全、新鮮、本物の牛乳産直を発展させよう」と、牛乳産直懇談会が四月五日、東京都内で開かれました。岩手の(株)湯田農業公社の高橋広治代表取締役、千葉北部酪農協(八千代牛乳)の梅原宏保組合長、福島市で酪農経営のかたわらミルクプラントで加工・販売している佐々木健三氏(農民連会長)の呼びかけで開かれたもの。宮城のミルクファーム蔵王の堀田良彰社長、京都美山ふるさと本舗の野谷五三男専務が呼びかけに応えて参加。牛乳産直の経験を交流するとともに、中小の牛乳プラントをめぐる厳しい状況を乗り越えるために共同していこうと話し合われました。「天然八千代牛乳」産直の五十年の歴史をもつ千葉北部酪農協。梅原組合長は「明治、雪印など大手メーカーのシェア獲得・安売競争によって市場がかく乱され、中小メーカーや生産者が苦しめられている。原乳価格は、大手には安く、中小には高い」と指摘。そのなかでも非遺伝子組み換えの飼料に全面的に切り換えるなど、品質向上の努力を語りました。 岩手、宮城、秋田の生協と産直にとりくむ湯田公社の高橋氏も、経済連が各メーカーに販売する乳価の不透明さに言及。「透明性をかちとることが、われわれ中小プラントの生き残る道」と述べました。 蔵王連峰を望むすばらしいロケーションのもと、テーマパークとともに牛乳工場があるミルクファーム蔵王。堀田社長は、年間十万人を超える入場者が訪れ、酪農体験交流も行っているテーマパークの運営を紹介。 美山ふるさと本舗の野谷専務は、農協の広域合併にともなって取り残された不採算部門の牛乳・漬物部門を、町の理解もあって引き継いできた思いを、「美山の特産をなくしてはならない。地域の砦です」と語りました。 佐々木会長は、家族経営で、酪農経営から牛乳の製造、宅配までこなすなかで、お年寄りから根強い人気を得ていることを紹介。 参加者は、情報交換と懇談会の開催を継続して、さらに共同の輪を広げていくことを確認しました。
(新聞「農民」2001.4.16付)
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[2001年4月]
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