――国会に提出された農協改革二法案の内容と問題点組合員自治と民主的運営の後退 (2)山本 博史
昨年十月に開催された第二十二回JA全国大会は、「農と共生の世紀づくり」をうたう方針を確認した。大会議案の組織討議と並行して、農水省の「農協系統の事業・組織に関する検討会」と全中会長の諮問機関である「総合審議会」が相互に連動した形で開かれ、組織討議結果よりもこの二つの会議の論議結果が優先された最終議案内容となった。 柱は三つ。(1)WTO体制を前提とした新基本法を踏まえた「主たる担い手」重視の経済事業のあり方、(2)金融情勢を踏まえた三段階一体となったJAバンク体制整備、(3)広域合併・組織再編後を見通した組織経営対策であった。 関税化受け入れ決定以来の政府・自民党との三位一体の姿勢を維持しながらの「改革」は、組合員である農民はもちろん、国民の国内農業への期待に応えるものでなく、いきおい強権的で中央集権的にならざるをえない。今回提案された農協改革二法は、この延長線上にあるといえる。 まず、農協法一部改正案からみよう。 営農指導を農協が行う事業の第一項目に位置づけることはよいとしても、法人経営を正組合員化することは同じ組合員に個人と法人で複数の議決権を与えることとなり、「一人一票の議決権」という協同組合の民主的運営原則に反している。 また、業務執行体制強化のために、信用事業を行う農協(すべての総合農協)に三人以上の常勤理事を置くことを義務づけるのは、非合併・小規模組合つぶしの政策といえる。これまでも合併推進のために、連合会役員選挙における被選挙権の剥奪や中央会賦課金の一律頭割部分の拡大、合併組合だけの組合長会議開催など、非合併組合に対する差別・弾圧が行われてきたが、それをいっそう徹底したものといえる。 経営管理委員会を設け、日常業務の執行責任をもつ農協理事会と分離することが「選択肢として」導入されたのは、一九九六年十二月の農協法改正であったが、奈良県農協を唯一の例外として、単位組合ではまだ実現していない。今回はすべて正組合員という枠をはずしたうえ、代表理事の選任権も与えて、経営管理委員会の役割を強化している。外部からも含めて専門家の理事を増やすための措置といえる。しかし、組合員の代表でもない、組合員によって選ばれたのでもない理事が、日常業務の最高責任者になることは、ますます農協の組合員離れをおしすすめることになろう。 中央会と農林中央金庫の機能・権限の強化は、当面する金融情勢への対応策とされる。しかしこれは、組合員主体の農協運営、単位農協が主役の系統組織(単協が本店、県連は支店、全国連は出張所)という協同組合の民主的運営の基本に逆行するものといえる。その中央集権化され強力になった権限で、次回詳しくみるような、「JAバンクの自主ルールによる破綻の未然防止策」として、単位農協が信用事業を行う権限(総合農協であること)を奪い、信連や隣接農協に譲渡させることになれば、ますます本末転倒となろう。
おわびと訂正連載一回目(四月二日付)本文中二段目七行目「信用事業を行う権限」の後、「を信連」が抜け落ちていました。訂正しておわびします。 (新聞「農民」2001.4.9付)
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[2001年4月]
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