「農民」記事データベース20010402-487-15

信州のおばあちゃんと“茶のみ”

吉田文子


 信州の「お茶おけ(お茶受けのことをこう呼びます)」といえば、まず思いつくのは「野沢菜漬け」です。「お菜(な)」「お葉づけ」と言えば、それは野沢菜のことであるほど、身近な「葉もの野菜」です。

 秋に霜が来て、「のり」(粘り気)が出、おいしくなるのを待って、漬け込みが始まります。それが出来上がるまでの間は、即席漬け風にさっと塩もみしたり、しょうゆ漬けにしたりした「とき漬け」を食べます。また春先になって、漬物が少し酸っぱくなってきたら、塩出しして醤油味をつけ、炒めたり煮たりして食べるのです。秋から春までずっと、信州のほとんどの場所で、いろいろに工夫された野沢菜漬けが食べられており、人それぞれの味があるので、どこにおじゃましても、食べるのがとても楽しみです。

 そこで、「やはり野沢菜の本場、野沢温泉村のものを食べなくては!」と思い、「お茶のみ」に出かけました。

 野沢温泉の台所「麻釜」

 畔上よしえさん、南雲とくさん、内田くにさんの三人は、野沢温泉に生まれ育ち、ともに村内で結婚した幼馴染の三人です。八十歳になった今でも、よしちゃん、とくちゃん、くにちゃんと、幼い頃の呼び名のまま「ちゃん」づけで呼びあっている大の仲良し。毎日温泉に浸かっているためか、お肌はツルツルのプリプリ。とても元気です。「野沢の衆はわりあいよそへ出ねぇで、村んなかで嫁行くのが多かったんだぁ。温泉はあるし、山の食べもんはうまいし、生活しやすいからなあー」。

 この村の食べ物と温泉は切り離すことができません。野沢菜を漬ける前には温泉のお湯で洗います。他の場所では真似ができませんので、この地の野沢菜漬けが独特のおいしさに仕上がるポイントのようです。

 「麻釜(おがま)」と呼ばれる、調理専用に作られているお風呂のような場所があり、ここはなんと九十度の源泉なのです。春にはわらびや根曲がり竹などの山菜、夏にはもろこしや枝豆、秋にはほうれん草や大根葉など、いつでも沸いている茹で用鍋のように気軽に利用されています。「なんでだかなぁ。麻釜いれると、長持ちするし、うまいんだよ。ほうれん草なんかは、家で茄でると、じきぃと、色悪くなるけど、麻釜で茹でると冷凍してとっといても色がいいんさー」。

 名物本家野沢菜漬け、芋なます、八つ頭の煮物、花豆の煮物、根曲がり竹の煮物、ぜんまいの煮物など、おいしい山の幸で「がぼんがぼん」とお茶のみを楽しみました。


「芋なます」の作り方

 ジャガイモをつま楊枝くらいの細さに切り、十分くらい水にさらしてでんぷん質を洗い流します。普通の炒め物よりやや多めの油でさっと炒め、酢、砂糖、塩、酒またはみりんを加えながらさらに炒める。シャキシャキとした芋の歯触りを残すように、加熱しすぎないことがコツ。カレー味をつける「カレー芋」もおいしい。

(新聞「農民」2001.4.2付)
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2001年4月

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