――国会に提出された農協改革二法案の内容と問題点組合員自治と民主的運営の後退 (1)山本 博史
政府は三月十六日の閣議で、いわゆる農協改革二法案(農協法の一部改正案と農林中央金庫法案)について決定し、国会に提出した。 農水省の説明によれば、食料・農業・農村基本法の制定と来年四月からのペイオフ解禁など金融情勢の激変を踏まえ、「農業者の協同組織としての原点に立ち帰った農協改革」の推進が急務であることから、農協系統の改革に向けた自主的努力を支援するための法制度の見直しであるという。 しかし、その内容は、信用事業を行う農協に常任理事三人以上を必ず置くことを義務づけて、非合併・小規模農協の自立的経営を脅かしたり、農協・信連・農林中金が「ひとつの金融機関」として機能するようなJAバンクシステムをつくりあげ、問題のある農協には信用事業を行う権限を信連や隣接農協に譲渡させるといった中央集権化を強めるものとなっている。 まず、提案された農協改革二法案の主な内容をみると、次の通り。 農協法の一部改正案では、(1)法人経営を家族経営と同じように正組合員になれるように改め、営農指導を農協の行う事業の第一項目とする、(2)業務執行体制強化のために、信用事業を行う農協には三人以上の常勤役員を置くことを義務づけ、うち一人は信用事業専任とする、(3)正組合員だけで構成することとなっていた経営管理委員の四分の一までは正組合員でない青年部・女性部・生産部会代表などが入れるようにし、理事の互選によっていた代表理事の選任権も経営管理委員会に与えること、信連や全農・全共連などには経営管理委員会設置を義務づけること、(4)農協中央会の機能・権限強化を図り、模範定款例は中央会が定めることとし、決算監査対象を拡大、中央会の指導をうけた農協は必ず総会で組合員への説明を義務づける、(5)その他、一定の手続きのもとに農協の地区の重複を認める、農事組合法人が同一性を保って有限会社などに転換できるようにする、農林中金を全国中央会の正会員とする、などが主な内容となっている。 また、農林中金法案では、まず大正十二(一九二三)年制定以来のカタカナ法をひらがなに改めるほか、(1)明記されていない目的を追加し、農協・信連等を会員とする農林漁業者の協同組合金融機関であることを明記する、(2)経営管理委員会を置き、金融専門家による理事会を置く、(3)農業関連産業などに限定されていた貸出先を拡大する、同時に、(4)現行の農林中金・信連統合法を「農林中央金庫及び特定農業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律」と改め、問題のある農協や信連を早期に発見して経営改善・組織統合による是正を図るための自主ルールを策定、その基本方針に即して再編強化の指導を実施できるようにする、そのため必要によっては自主的積立財源(指定支援法人)から資金面での支援を行う、など新たな農協金融システムを構築する。 次号から二回にわたり、問題点を整理してみたい。
(新聞「農民」2001.4.2付)
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[2001年4月]
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