暫定発動は世界の常識、損害起きても「慎重調査」は世界の非常識
大臣が「暫定セーフガード発動の腹を固めた」と言っても、農水・財務・経産省の官僚たちは「調査中。なんとも言えない」の繰り返し。しかし「調査中」であっても、暫定措置が発動できることは、WTO協定からも明々白々。 実際、WTO協定後、農産物のセーフガードは十二件発動されていますが、そのうち九件が暫定セーフガードを発動しており、暫定発動は世界の常識(表1)。「調査中」を理由に、暫定発動さえも引き延ばす日本政府の姿勢は異常です。
「慎重な調査」とは「世界のどの国もやったことがない証拠集め」いつまでたっても「調査中」を繰り返し「被害が輸入増大によるものか、因果関係を慎重に調査して“正しい”セーフガードを発動したい」というのが日本政府の態度。しかし“重大な被害が起きても慎重に”というやり方は、世界的に見ても異常で、非常識きわまるもの。農産物のセーフガード発動十二品目中、アメリカ二品目、韓国一品目に関係国からクレームがつき、WTO内の小委員会で審査されましたが、すべてが「協定違反」のクロ裁定(表2)。その理由は、輸入増大と損害の因果関係の「立証が不十分」というもの。
韓国は裁定の採択後に乳製品のセーフガードを撤回しましたが、発動から三年近く輸入数量 制限を実施しました。一方、アメリカは、いまなお子羊肉と小麦グルテンの輸入数量 制限を続行中です。 “敗訴”を覚悟してセーフガードを発動し、最終決定が出たら撤回する――これが世界の常識です。 これに対して、日本の農水省いわく「WTOで訴えられて勝訴した国はない。だから慎重に因果関係を立証するのだ」(三月二十二日の交渉で)。 関係団体の要請を受けて被害をおさえるためにセーフガードを発動する韓国やアメリカと、被害が目の前で起きていても「慎重に調査中」で動こうともしない日本政府。国民と農民の立場から見て、どっちが逆立ちしているか、明らかです。 世界中でどの国もやったことがない「証拠集め」にうつつを抜かすのをやめ、機敏にセーフガードを発動すべきです。
暫定セーフガード発動が遅れれば重大な損害がありうる場合、正式の調査が終わるのを待たずに発動できる。期限は二百日以内。本格的なセーフガードの発動に引き継がれることが前提。(WTOセーフガード協定第六条) (新聞「農民」2001.4.2付)
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[2001年4月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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