韓日農民の交流 (5) 最終回
農民運動への信念に胸熱くWTO協定がもたらす世界化の大波のなかで苦悩するアジア・モンスーン地帯の農業の実態は、日本も、韓国も大差がない―これが、韓国の農村をまわって一番強く感じたことでした。もう一つは、日本では、教科書から「侵略」の事実を削ったり、「大東亜戦争によって、(欧米の)植民地政策から開放した…」(野呂田衆院予算委員長)などと無反省な言動が政府首脳から繰り返されているが、侵略された側の傷口は深く、日本の保守勢力の動きは本当に「傷口に塩をすり込むような行為」に他ならないということを実感したことでした。 私と高橋清さん(多古町旬の味産直センター代表)は、韓国全農を訪問した小林節夫さん一行と別行動だったので、技術者協会の事務所ビル(「農業技術振興館」)の会長室で、勇退した鄭・前会長から、農民運動についての信念をお聞きする機会に恵まれました。 鄭・前会長は、一九六〇年の技術者協会設立以来、四十年間専従役員として活動してきた思いを感慨を込めて語ってくれました。 「農民運動で一番大切なことは、経済的に自主・自立し、運動的には清潔であることだ。技術者協会は、初めは給料を払えない頃があったが、政府の補助を受けることは一切しなかった。この会館を建てる時に会員から集めたお金も、それ以外の用途に流用することはしなかった。会費を集めてやっていくことは大事だ。農民団体を維持・運営することは大変なことだが、汚い金をもらって、経済的自立・自主性を失ったら、大声で話しかけることができなくなってしまう。不正・腐敗と協調しないことだ」 「農の心は平和そのもので、真心と真心を架け橋にして連帯していかないと農業は守れない。その国の食文化を守らないと農業は守れない。外国に行くと、チャイニーズレストランとジャパニーズレストランが、必ずある。日本の食文化がもつ重要な役割を、日本の国民自身がもっと自覚することが大切だ」 私は、鄭氏の話にまったく同感し、感動に胸を熱くしながら「日本では農民連が同じ思いで運動を広げています」と話すとともに、鄭氏のこれまでのご苦労に心から敬意を表して連帯の握手を交わしました。 日本の技術運動は、政府や保守政治家に援助を求めて政治的な自主性を失っていたり、宗教団体とつながったり、一つの技術や農法・資材を絶対化して独占してみたりと、科学的で自主的な運動が少ないのを不満に思ってきました。また、政治・農政問題をタブー視して行動しない傾向が強いのも特徴だと思います。 韓国・全国農業技術者協会が(1)農業の科学化、(2)農村生活の革命、(3)技術の革命というスローガンを掲げて、農民の技術や文化要求に立脚した農民自身の組織であると同時に、農民の技術・生活・文化といった要求を基礎にしながら、農政活動をもう一方の柱に位置づけて、韓国の農業団体のなかで中心的な役割を果たしている農民運動団体なのだという点に、私たちが学ぶべきものがあるという思いを深くしました。 (飛田 元雄)
(新聞「農民」2001.3.26付)
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[2001年3月]
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