新婦人と農民連の共同を強めて手をたずさえ、食と農を守ろう新日本婦人の会副会長 高田公子さん 対談 農民連会長 佐々木健三さん新日本新婦人の会と農民連の産直運動は十年をこえました。新婦人は一月末に開かれた第百二十回中央委員会で産直の新たな発展方向を決定し、「食べて守ろう家族の健康」と産直を班の活動に位置づけています。新婦人副会長の高田公子さんと農民連会長の佐々木健三さんに話し合ってもらいました。
“産直を全班の活動に位置づけ広げます”(新婦人)産直パーティが好評 班会楽しくいきいき佐々木 新婦人のみなさんは第百二十回中央委員会で新しい産直の方針を決めましたが、私たちも大変に心強く思っています。最初にその方針についてお聞きしたいと思います。高田 新婦人の基礎組織、班は全国に一万五百あります。半分の班に一万を超える産直にかかわる小組があり、会員の二七%が産直に参加し、農民連の農産物を食べています。一九九九年の調査では野菜ボックスは八万です。 十年前に産直がスタートした時は、野菜が中心でしたが、一九九三年の米パニックがあってから、お米の産直を始め、その後は魚も含めて果物から豚肉、牛乳、ヨーグルトなど、多様に広がってきました。「三%の大豆の自給率を私たちの運動で引き上げていこう」とのスローガンを掲げ、大豆トラスト運動も進め、四%になったと伺い、うれしく思っています。 佐々木 多様に広がってきていますね。 高田 十年間で、会員の年齢も高齢化したり、夫婦二人の核家族に戻ったりとか、また、若い会員さんを迎える中で、野菜ボックスを食べきれない、お米も一カ月十キロでは食べきれないという悩みなどが出されました。 暮らしがいっそう大変になって、全体としては産直がなかなか増えない。どうしたらいいのだろうかと第百二十回中央委員会で方針を決めたのです。 佐々木 「食べて、学んで、美しく」ですね。 高田 小組まかせにしないで、私たちの基本の組織である班で、本格的に、しかも全班で産直を取り組もうということです。人間本来の持っている楽しみである「食べること」をもっと大事にし、産直パーティも含め食べておしゃべりしようという方針を打ち出したらすごく好評で、班会ができなかったところも集まってくるようになったと喜ばれています。 佐々木 班の活動に産直を位置づけていることは、私たち農民連にとっても心強いかぎりです。
若いお母さんたちにも広がる産直ボックス高田 茨城のコスモス班では、赤ちゃんの離乳食作りが好評で各地に広がっています。若いお母さんたちに産直ボックスを見せても、どう調理していいかわからないという状況のなかで「保育スタッフ」といって、年配の会員さんが小組にお手伝いにいっていますが、その時に一品作って持っていったりしています。そういうなかで、若いお母さんたちが、産直の野菜を食べたいというふうに変化してきています。 佐々木 昨年は産直十周年ということで全国各地で「産直フェスタ」が行われましたね。 高田 離乳食作りや赤ちゃんのための産直レストランを行いとても喜ばれ、若いお母さんたちに産直ボックスが広がっています。 神奈川の西支部の戸部班は、高齢者の一人暮らしの人が多い班ですが、そこで「産直野菜が多くて使い切れないからボックスをやめたい」と言われ、年配の方で料理が上手にできる人が、産直野菜を丸ごと使って料理をしました。そこで「お料理小組」ができました。還元された班財政で小組用のボックスをとって、丸ごと料理してくださっています。 佐々木 それを班会議で食べるのですか。 高田 そうすると子どもが学校にいけない悩みなどいろんな本音が出てきて、「こんな楽しい班会議なら」と若いお母さんにも声をかけて、いまでは一緒にやっています。 佐々木 私の娘も埼玉にいますが、子育ての悩みは本当に深刻で、どうしていいかわからないと言っています。さっそく埼玉の新婦人に紹介しました。こういう運動は確かに広がると思いますね。 高田 産直パーティが発展して、そば打ちとか、豆腐作りとか、ウインナー作りとか、「赤ちゃんと食べようおなべのつどい」とか、みそ作りにお父さんも呼んできて、子どもも一緒に六十五人でみそ作りをした…。こういう取り組みが進んでいます。 佐々木 そんなに大勢が参加しているんですか。すごいですね。 高田 農民連の方々が作ってくださった農産物を食べる人をもっとまわりに広げて、増やすことが日本農業を守ることなんだと、交流のなかで実感する人を増やしています。愛知では、農民連の農産物を食べていない人がいっぱいいますので、会員さんの総当りをし、まわりにも広げています。そのために、大阪や神奈川などではカラーのチラシを作っています。チラシには新聞「農民」のハンバーガーの特集記事を活用させてもらっています。 佐々木 おおいに使ってください。
輸入農産物の危険性、セーフガードも学習高田 生活が苦しくなり家族も小家族になったり、いろいろ苦労しながら、それでも産直運動に頑張っていけるのは、学習の成果ではないかと思います。佐々木 私も福島県連にいますから、大阪にも何回か新婦人会員さんとの交流にいきました。 高田 農民連の方々が小組から職場にまで足を運んでくださり、農民の方から生の声で日本農業がどんなに危機的な状況になっているのか、それに負けずに頑張っている心意気にふれ、少々高くても日本農業を守らないと安心して食べていけないという思いを強くしています。 佐々木 新婦人のみなさんと交流すると、「消費者の中にもこんなに日本の農業を大事に思っている人たちがいるんだ」ということを知って、「農業をあきらめようと思っていたけれど、一生懸命にやろう」と勇気づけられる農民もいます。 高田 激増する輸入農産物に対して、セーフガード(緊急輸入制限)の発動を求めて農民連のみなさんと学習しながら、自治体への申し入れ活動をしていますが、セーフガードを一日も早く発動してほしいという声は高まっていますね。 佐々木 農民連はいち早くセーフガードの問題に取り組みましたが、新婦人のみなさんの署名への取り組みはすごいですね。ある地方議会で賛成と反対が同数というときに、新婦人の会員さんたちが集めてくれた署名の力で採択させています。 最近、マスコミが輸入野菜の問題を、取り上げていますが、取り上げる角度は値段が安いというのが主ですね。そこからは、安全性だとかおいしさとか、新鮮さはまったく欠落しています。農民連は食品分析センターを持っていますから、その辺はこれからもきちんと追跡しようと思っています。 新聞「農民」号外を見て、初めてコンビニ弁当やハンバーガーの怖さを知ったという方が多いですね。私たちは、今後ともおおいに追求していきたいと思っています。
学校給食に地場産をと全国で取り組んで高田 産直運動が発展して、子どもたちにもっと安心できるものを食べさせたいということで、全国各地で学校給食の取り組みが進み始めています。とくに、農民連の安心できる野菜を子どもたちにということで運動を強め、埼玉県産の米や野菜、大豆を使った納豆、みそ、醤油、県産小麦のパン、うどんが給食に使われるようになっています。大阪の寝屋川市でも、大豆トラスト運動で作った大豆で、お豆腐屋さんにお豆腐を作ってもらう運動をやって、「こんなにおいしいものを自分たちだけで食べているのはもったいない」と、お豆腐屋さんの協力を得て、学校給食に産直大豆の豆腐と揚げも四校で実現しています。こういう経験を全国に広めていきたいと思っています。
産直運動が地域ぐるみの町づくりへと発展佐々木 町ぐるみの運動に発展したところもありますね。高田 「自分の住んでいる街で安心して買い物できる街作りをやりたいね」という話から発展したのが、東京・新宿の柏木班の取り組みです。これは新聞「農民」にも取り上げていただきましたが、町の評判になっています。 三%の大豆の自給率をみんなで引き上げようと始まった豆腐づくりから、毎月第三土曜日に「新婦人豆腐の日」をやっています。お豆腐屋さんの店の前で会員同士が交流し、井戸端会議の場所になっているんですね。 働いている人も土曜日だから寄れますし、ワイワイ楽しそうにしている様子を見た隣のコンビニの人が「一体なんなの」と顔を出し、そのコンビニに大豆トラストで作った醤油を置いてもらうようになったり、お米屋さんは「このお米はほんとにおいしい」というんです。 佐々木 お米屋さんが。 高田 昨年はお米屋さんとかコンビニとか、町の人たちが一緒になって、茨城の農民連の方もきてもらい収穫祭をやりました。町会の後援も得て、地域みんなの取り組みになり、いまはお肉屋さんにも話しかけています。 産直のお米をお米屋さんが配達し、しかも新婦人の会員さんには少し安くしてくれます。 佐々木 メリットがあっていいですね 高田 東京・中野で始まった豆腐作りが、新宿での町ぐるみの取り組みに発展し、東京の江戸川、文京、愛知の緑にと広がっています。
21世紀はファーストフードでなくスローフード高田 新宿の会員さんたちの運動は、人間本来が持っている優しや温かさというか、そういうふれあいを生んでいます。いま新婦人のなかで“ファーストフードではなくスローフードを”という言葉が言われていますが、産直運動を通じて、二十一世紀に何が大事かということを示しているのではないかと思います。できあいの一人ぼっちの食事でなく、ぬくもりのある手作りのおいしいものを食べて、心豊かになるということと合わせて、食文化を引き継いでいる気がします。 佐々木 組織と組織の産直運動は世界的にみてもないんですね。貴重な財産ですね。 高田 産直運動が商店街をも含めた町づくりを視野に入れるところにまで発展してきており、大事な役割を果たしていますね。食と農を守る運動の方向が見えてきたのではないかと思っています。 佐々木 これからもいろいろな問題に出合うでしょうが、原点はお互いに学習をし、情報を交換し、日本農業を守っていこうということにあると思います。みなさんの期待に応えられるように、安全でおいしくて、しかも量もいっぱい作っていこうと頑張っていきます。 どうもありがとうございました。
(新聞「農民」2001.3.26付)
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[2001年3月]
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